ヴァンパイア・リヴァンプド
ヴァンパイア・リヴァンプド
「吸血鬼」神話を解体する
発売日 2026/03/25
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07842-1
ページ数 520 頁 Cコード 0098
定価 3,960円 (本体価格3,600円)
《ヴァンパイア学》が、ここに始まる。
近代ヴァンパイア文学史——
東欧の民間伝承にあらわれる怪物から、ルスヴン卿、ドラキュラ伯爵など文学史上の記念碑的キャラクターまで。
ヴァンパイアをめぐる各地のテクストを批判的にひもとき、ゲーテ、ホフマンらの物語にもふれながら、イメージの歴史的変遷を最新の視座にもとづき詳述する。
現代カルチャーに広く根付いたヴァンパイア表象はどこから来たのか。本質に迫る必読の文学研究。
[本文より抜粋]テクストや文字は、それ自体がヴァンパイア的特性を持つ。なぜなら、それらは、忘れられたテクストが後世の発見により蘇る(=死後の蘇り)という意味で、半永久的に残るだけでなく、他のテクストや現実などを参照し養分にするからだ〔…〕。その意味で、作家や詩人は――あるいは他者の言うことを喜々として引用する我々も――ヴァンパイアに等しい〔…〕。
山下大地 (ヤマシタダイチ)
ヴァンパイア学者(ヴァンピロロジスト)。京都大学文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。立命館大学嘱託講師(有期雇用)。専門はヴァンパイア学(ヴァンピロロジー)。ヴァンパイアの現れる史料や文学テクストを扱い、現在は主に18‐19世紀のヴァンパイア史を研究する。森口大地名義での編訳書に、ラウパッハ、シュピンドラー他『ドイツ・ヴァンパイア怪縁奇談集』(幻戯書房)。
前書き
第1章「ヴァンパイア」ができるまで
1.ヴァンパイアの「当たり前」を見直す 定義と名称について考える
「vampir/ヴァンパイア」という名称が孕む問題
似たような様々な怪物たち
換称となる「ヴァンパイア」――十把ひとからげ現象
「セルビア事件」以前と以後を区分する
換称化を踏まえたvampir/ヴァンパイアの定義
構築物としてのヴァンパイア
自己中心的な視点
「ヴァンピリズム」とは
ヴァンパイア・リヴァンプド
2.「ヴァンパイア」の語源にまつわる問題
「ヴァンパイア」の語源
ウィルソンが紹介する三つの語源説
(1)テュルク語系統説 (2)ギリシャ語系統説
(3)スラヴ語系統説 (4)スラヴ語系統説――ブリュックナーの議論
近年の語源研究
語源研究の難しさ
3.〈ヴァンパイア紀元〉としてのセルビア二大事件
〈ヴァンパイア紀元〉と二つの注意事項
「キソロヴァ」事件――[A]フロムバルトによる報告書
「メドヴェギア」事件――[B]グラーザーによる報告書
「メドヴェギア」事件――[C]フリュッキンガーによる報告書
第2章 様々な「封じこめ」 vampir の“後進”性と〈よそ者〉性
1.一八世紀の議論と、オッセンフェルダーの詩「ヴァンパイア」
vampir に対する恐怖――「暴徒」を懸念する二人
オスマン帝国の脅威と、国境の治安維持
マリア・テレジアによるウィーンの法令と、vampirの政治利用
共通する「封じこめ」への意志
一八世紀の議論あれこれ――ランフト、カルメらによる論文
オッセンフェルダーの詩「ヴァンパイア」――キリスト教道徳を嘲笑うvampir
「甘いもの」による啓蒙
2.「封じこめ」られるか、逃れるか 佐藤亜紀『吸血鬼』に見られる構図
セルビア事件との類似
スケープゴートとしての〈よそ者〉
「封じこめ」られる一八世紀的vampir――ヤレクとクワルスキの〈よそ者〉性
芸術 (=文学)に向かう一九世紀的ヴァンパイア――ゲスラーの〈よそ者〉性と謎の「学生」
儀式/お芝居としてのセルビア事件――現実と非現実の混交
3.「バーバリアン・エラー」 ヴァンパイア文学に見られる説明行為
ヴァンパイア(文学)史――ビフォア・ポリドリ、アフター・ポリドリ
どれをヴァンパイア文学とみなすか
説明行為と西洋中心主義
ロバート・サウジー『殲滅者タラバ』の註釈
ジョン・スタッグの詩「ヴァンパイア」の前書き
G・G・バイロンの詩『異教徒(ジャウア)』の註釈
ジョン・ポリドリ『ヴァンパイア』の前書き
補論 ヴィルヘルムとジェラルダインはvampirか
第3章 文学上の革命 ルスヴン卿の誕生と、ヴァンパイアのキャラクター化
1.ルスヴンはいかにしてなったか
ジョン・ポリドリ『ヴァンパイア』とは
ルスヴン卿というキャラクター
舞台上のルスヴン
共通するあらすじ
メロドラマというジャンルと、矮小化されたルスヴン
「デモーニッシュ」なルスヴン
2.『黒人ヴァンパイア』 搾取者/寄生者としてのヴァンパイアの確立
ジョン・ポリドリ『ヴァンパイア』に対する否定的評価
『黒人ヴァンパイア』序文
ユーライア・デリック・ダーシー『黒人ヴァンパイア』
寄生性と搾取――「彼らは、ヴァンパイア以外の何であろうか?」
3.「ヴァンピリスムス」が加えた捻り ホフマンの挑戦と失敗
E・T・A・ホフマン「ヴァンピリスムス」――枠外物語における仕掛け
死者を食べる生者――vampir/ヴァンパイアの構図の転覆
アウレーリエの人肉嗜好と、ルスヴン的な「見知らぬ男」
不在により強調される『ヴァンパイア』――流行するポリドリへの挑戦
第4章〈吐き気〉と仮死による「封じこめ」
1.〈吐き気〉の契機としてのvampir/ヴァンパイア
ゲーテの詩「コリントの花嫁」
〈吐き気〉――拒絶を強制させるもの
「花嫁」から〈吐き気〉は排除できたのか――ゲーテの挑戦
ゲーテのヴァンパイア批判
2.仮死に上塗りされるvampir/ヴァンパイア
腐敗――明らかな死の目印
市民階級における仮死への恐怖
「死の上の生」から「生の上の死」へ――腐敗が持つ役割の変化
「個人化する死」の時代
仮死という迷信と、新しい「封じこめ」の契機
第5章 男性と女性の支配権争いと〈オリエンタリズム〉
1.女性のヴァンパイアたちの排除
女性のヴァンパイアたち――「死人花嫁」、「死者を起こすなかれ」、『恋する死女』
〈宿命の女(ファム・ファタール)〉を定義することの困難
警告する年長の男性たち――聖堂参事会員、老魔法使い、神父セラピオン
“危険”な女性の排除の正当化――アンブローサ、ブルンヒルデ、クラリモンド
レ・ファニュ「カーミラ」――カーミラとローラの関係
「父」の、あるいは男性による秩序の回復
2.〈東洋(オリエント)〉化されるヴァンパイア 「ヴルラのヴァンパイア」と『ドラキュラ』
〈オリエンタリズム〉
〈東洋(オリエント)〉の乙女たち――イアンテとヘイラ
ブラム・ストーカー『ドラキュラ』と「逆植民地化」――「原始的なもの」に対する恐怖
3.侵略恐怖が投影された国、アメリカ
〈東洋(オリエント)〉=ロシアへの恐怖――イギリスの「強いオスマン帝国」政策
二つのドラキュラ――都合のいい道具としての〈東洋(オリエント)〉と、脅威としての〈東洋(オリエント)〉
終章
後書き
註
参考文献
図版出典
人名・作品名索引








