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特集

【真夏の書籍装幀祭――6・7月刊行物より】

2021/08/02

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弊社書籍の装幀についてはありがたくもお褒めの声をいただくことがしばしばありますが、実際にはどのような思いで各担当者は取り組んでいるのか。この2か月ほどの新刊に特徴あるブックデザインの本が集中したのを機に、以下写真小特集を組んでその一端をお届けします。試みに、数点には詳細なデータも(プロが見ればすぐに分かることですが)付してみました。どうでしょうか。ちんぷんかんぷんな文字列にも、なんとなく独特のロマンが感じられるかもしれません。
ということで、店頭で手に取る機会が難しい読者の方々はぜひ以下御覧いただき、お買い上げの参考にしていただければ幸いです。(配列は刊行日順)





◉『エラリー・クイーン 創作の秘密』

エラリー・クイーン 創作の秘密1

エラリー・クイーン 創作の秘密2

エラリー・クイーン 創作の秘密3

◆装幀・水戸部功


◆用紙・印刷・書体

カバー・帯:ヴァンヌーボV スノーホワイト130kg/グロスニス加工
表 紙:サガンGA 黒 100kg
見返し:ビオトーブGA-FS マゼランブルー 90kg
本 扉:NTラシャ 漆黒 70kg
本 文:OKライトクリーム 58.5kg/本文書体=リュウミンL
花 布:伊藤信男商店 103
スピン:伊藤信男商店 61


◆編集担当者より

既刊『エラリー・クイーン 推理の芸術』(評伝)に続くクイーン研究本として、水戸部さんには装幀もペアになるようにお願いしました。黒地に白抜きで原題を大胆に配したデザインは、ミステリ作家エラリー・クイーンのロジック重視の作風にも通じます。また、文字(アルファベット)に対する徹底した拘りもクイーン作品の特徴の一つです。



◉『インディゴ』

インディゴ1

インディゴ2

インディゴ3

インディゴ4

◆装幀・水戸部功


◆編集担当者より

作品の持つ斬新さ、不穏さをデザイナーの水戸部さんが見事に表現してくれました。カバーを外して、広げてみて下さい。よく見るとそこに現れてくるのはゼッツ氏の輪郭。それは実作者ゼッツ氏ではなく、登場人物のゼッツ氏なのでしょうか。本扉は表には何も印刷されておらず、裏だけに印刷されています。



◉『サイコマジック』

サイコマジック1

サイコマジック2

◆装幀・コバヤシタケシ


◆編集担当者より

本体全面を覆うのではなく、上部が覗くようにカバーを掛けた仕様です。眼光鋭い著者写真の下には、虹色に輝く箔をあしらいました。活力をあらわす赤、生命の源泉をあらわす渦巻模様、人間を成す4つのエレメントを象徴する絵......いずれも本書の内容からインスピレーションを得て選び出されています。この本を手にすること自体がサイコマジック(=魂を癒やす術)となり、読者が手にした時にこそ完成するアートクリエイションです。



◉『マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集』

マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集1

マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集2

マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集3

マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集4

◆装幀・坂野公一(welle design)


◆用紙・印刷・書体

カバー・帯:Nプレミアムステージ ピュアホワイト 135kg/グロスニス加工
表 紙:色上質 うぐいす 特厚口/グロスPP加工
見返し:色上質 黒 特厚口
本 扉:色上質 オレンジ 薄口
本 文:淡クリーム琥珀N A 57.5kg/本文書体=秀英にじみ明朝L
花 布:伊藤信夫商店 88 オレンジ
スピン:伊藤信夫商店 17 黄緑


◆装画

カバー:ジャン・デルヴィル「メドゥーサ」(1893年)
本 扉:フェルナン・クノップフ「ブリュージュにて――正門」(1904年頃)


◆編集担当者より

装画・扉画は、作者と同じベルギー出身の2人の画家の作品から、内容にちなんだものをチョイス。いずれの原画も判型に対してかなり横長でしたが、装幀をご担当いただいた坂野さんに、絶妙な調整とバランスで、美しいタイポグラフィとともに配していただきました。
カバーを外した表紙は、弊社の本では少し珍しいPP加工。メドゥーサの顔のアップは、爬虫類的なテカリの効果もあり大迫力です。
本文書体は、個性的な活版印刷の雰囲気と可読性とが両立した、秀英にじみ明朝Lを採用しています。



◉『「探偵小説」の考古学』

「探偵小説」の考古学1

「探偵小説」の考古学2

「探偵小説」の考古学3

「探偵小説」の考古学4

◆装幀・水戸部功


◆編集担当者より

重厚さ、荘重さ、そこから生み出される本の存在感、編集者お気に入りの装幀です。カバー表の模様は実は箔押しです。印刷とは一味違った高級感が生み出されています。
表から続いているカバー裏の模様部分は黒っぽいメタリックインクを使用。黒地にうっすらと模様が浮かび上がり、いぶし銀のような渋味を醸し出しています。



◉『人狼ヴァグナー』

人狼ヴァグナー1

人狼ヴァグナー2

人狼ヴァグナー3

人狼ヴァグナー4

◆装幀・山田英春


◆編集担当者より

カバーの挿画は本文中にも収録されている、ヘンリー・アネレイ(Henry Anelay)による雑誌連載時の挿画24葉のうち、第12章「人狼」のもの。緻密に描かれた美しいモノクロの絵に、デザイナーの山田さんが上品でありながらインパクトのある色彩を施してくれました。よく見ると狼の目が漆黒で、狼のまがまがしさが際立ち、そこにこちらの目が引き付けられます。



◉『高原英理恐怖譚集成』

高原英理恐怖譚集成1

高原英理恐怖譚集成2

高原英理恐怖譚集成3

高原英理恐怖譚集成4

◆装幀・久留一郎(久留一郎デザイン室)


◆装画・山本タカト「ブーケ」


◆用紙・印刷・書体

カバー・帯:ユーライト 110kg/5色(プロセス4色+特色ゴールド1色)/赤金箔/光沢グロスPP
表 紙:NTラシャ 漆黒 100kg/特色ゴールド1色
見返し:NTラシャ 漆黒 100kg
本 扉:NTラシャ 漆黒 100kg/特色ゴールド1色
花 布:アサヒクロース A90 黒
スピン:アサヒクロース A33 黒


◆編集担当者より

著者の希望を踏まえつつ、文字を丁寧に大切にしながら、「ノーブレスオブリージュ(noblesse oblige)」「ノーブル(noble)」「エレガント(elegant)」、そして「ノアール(noir)」を念頭においたデザインです。
カバー文字は、17世紀〜19世紀 洋書(革装本)のように、赤金箔となっています。また仕上りは、光沢グロスPPでベルヴェットの光沢感(フェティッシュ感)を醸し出しています。



◉『骸骨 ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚』

骸骨 ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚1

骸骨 ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚2

骸骨 ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚3

◆装幀・岡本洋平(岡本デザイン室)


◆編集担当者より

百年前の英国幻想奇譚である本書のカバーは〈蠟引き加工〉という特殊加工を施しています。アンティークのように古風な趣を醸しつつ、新鮮な驚きを持ってお楽しみいただける本にするため、タイトル文字に幽かな擦れを加えたり、繊細なテクスチャーを全体にしのばせるなど、手の込んだ技が細部に仕込まれ、クラシカルな風合いが巧みに創り出されています。内容に自信があるからこそのこの装い、西洋骨董のように永くご愛蔵ください。



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