各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

作家佐藤究

『動きの悪魔』

ステファン・グラビンスキ 著 芝田文乃 訳               

彼は〈ポーランドのポー〉、そして〈ポーランドのラヴクラフト〉の異名で知られている。音楽の世界では、〈メタリカ〉を筆頭に数多のメタルバンドが、ラヴクラフト作品に影響された詞や曲を書いているが、メタルとの親和性で言えばグラビンスキの短篇集『動きの悪魔』は、ラヴクラフト以上である。なぜなら徹頭徹尾、鋼鉄の蒸気機関車と線路にまつわる悪夢なのだ。まさにメタルではないか。

『定本 夢野久作全集 第2巻』

夢野久作 著 西原和海/川崎賢子/沢田安史/谷口基 編         

『定本 夢野久作全集2』には、月報にエッセイを寄せた。収録作「幽霊と推進機(スクリュウ)」では、前述のグラビンスキに通じるメタル性、機械と血の混合するような悪夢がくり広げられる。

『YEAH BUDDY! ロニー・コールマン自伝』

ロニー・コールマン 著 山本義徳 監修・解説 松田和也 訳             

最後は『YEAH BUDDY! ロニー・コールマン自伝』。ボディビルファンで彼を知らぬ者はいない。ボディビルもまた、バーベルという鋼鉄と肉体が織り成す現代の悪夢である。