各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

ゲーム作家米光一成

『タロットの宇宙』

アレハンドロ・ホドロフスキー/マリアンヌ・コスタ 著 伊泉龍一 監修 黒岩卓 訳 滝本誠 解説         

ぼくのために魂の書を出す幻の出版社が国書刊行会というイメージがある。たとえば『タロットの宇宙』であるとか。カルトな映画監督の、しかも映画の本でなくマニアックなタロット研究の、六五〇ページ超えの、手に取ると六八〇〇円でも安いと判る、そういった本。損得抜きなんじゃないか。ぼくが妄想で生み出した幻の出版社なんじゃないか。

『高原英理恐怖譚集成』

高原英理 著                 

ぼくのために魂の書を出す幻の出版社が国書刊行会というイメージがある。(……)たとえば『高原英理恐怖譚集成』であるとか。グロテスクであったり奇怪面妖であるにもかかわらず言葉の積み重なり方が美しく美しいがゆえに恐ろしい。幻のような短編集が自分の手元にあること、そしてベストセラーにはなってないことが、噓だろう、信じがたい。

『氷の城』(タリアイ・ヴェ―ソス・コレクション)

タリアイ・ヴェーソス 著 朝田千惠/アンネ・ランデ・ペータス 訳             

ぼくのために魂の書を出す幻の出版社が国書刊行会というイメージがある。(……)たとえば『氷の城』であるとか。自然豊かなノルウェーを舞台に孤独と喪失からの回復を描いた小説が、一九六三年に刊行されていて、五〇年ぶりに新訳刊行されることが信じられないし、言葉でこのような心の動きを描き出せる奇跡が読んだ後でも幻のように感じる。