各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

SF研究家/文芸評論家牧眞司

『パースの城』(文学の冒険)

ブラウリオ・アレナス 著 平田渡 訳               

青春期の読書でとくに愛着が深い叢書は、集英社《20世紀の文学》、河出書房新社《モダン・クラシックス》、白水社《世界の文学》だが、社会人になって以降では何をおいても国書刊行会《文学の冒険》である。そのなかからわが偏愛の一冊をあげるとしたら、夢とゴシックのシュルレアリスム『パースの城』である。見果てぬ憧憬のように心から離れない。

『狂人の太鼓』

リンド・ウォード 著                 

印象に焼きついていることでは、木版画のみで綴られた文字のない小説『狂人の太鼓』も同様である。わたしがリンド・ウォードについて書いた原稿が縁で、この本の解説を担当することになった。いまはなき新宿の喫茶店「NEW TOPS」で打ち合わせをしたことを懐かしく思いだす。

『第四の館』(未来の文学)

R・A・ラファティ 著 柳下毅一郎 訳               

国書刊行会はSFでも意欲的な企画が目立つ。とりわけ奇想の賢人(あるいは逆説の狂人)ラファティの長篇『第四の館』の翻訳は快挙だ。