各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

ライター瀧井朝世

『世界×現在×文学 作家ファイル』

越川芳明/柴田元幸/沼野充義/野崎歓/野谷文昭 編

二十代の頃、自分にとってのブックガイドは(……)『世界×現在×文学 作家ファイル』だった。現代作家一一八人のプロフィールと作品紹介が収録されており、気になる作家のページに付箋を貼り、メモして書店に通ったものだ。本作で知ったカレン・テイ・ヤマシタの『熱帯雨林の彼方へ』に感激し、その後絶版になったこの作品を書評で取り上げたところ編集者の目にとまり、新装版を刊行してもらえたのは嬉しい思い出だ。

『魔法の書』(文学の冒険)

エンリケ・アンデルソン゠インベル 著 鼓直/西川喬 訳             

同じく二十代の頃、書店でタイトルに惹かれて入手したのがエンリケ・アンデルソン゠インベル『魔法の書』(鼓直・西川喬訳)。奇妙で愉快な短篇集で、表題作は古代史の教師が古書店で不思議な手稿本を見つける話。忘れがたいのはたった5行の「タブー」で、これまでの人生で一番笑った掌編で、今でも思い出し笑いしてしまうほど。

《短篇小説の快楽》(全5巻)

一巻ずつ刊行を待ちわびたのは《短篇小説の快楽》全5巻。ウィリアム・トレヴァー、キャロル・エムシュウィラー、レーモン・クノー、アドルフォ・ビオイ゠カサーレス、イタロ・カルヴィーノそれぞれの新訳・日本オリジナル短篇集だ。装丁も美しく、全巻揃えた時は嬉しくもあり、これが最終巻かと寂しくもあった。またこんなシリーズが読みたい。