各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

文筆家/編集者/ユーチューバー吉川浩満

『普遍の鍵』(世界幻想文学大系45)

パオロ・ロッシ 著 清瀬卓 訳               

国書刊行会について考えると冷静さを保ってはいられない。この版元の愛読者であるだけでなく、私の最初の就職先でもあるからだ。思い出は数え切れない。《世界幻想文学大系》の掉尾を飾る『普遍の鍵』は、国書刊行会との出会いとなった一冊。高山宏さんの本を通してだったと記憶している。こんなすごいシリーズと書物を刊行する出版社があるのかと感動した。

『レフ 芸術左翼戦線』(ロシア・アヴァンギャルド7) 

松原明・大石雅彦 編               

国書刊行会について考えると冷静さを保ってはいられない。この版元の愛読者であるだけでなく、私の最初の就職先でもあるからだ。思い出は数え切れない。(……)入社試験を受けた際、「お土産」として持たされたのが『レフ 芸術左翼戦線』である。とんだお土産があるものだ―もちろん褒め言葉である―と瞠目した。造本も最高である。

『ヘミングウェイの女性たち 作品と伝記の間』

丸田明生 著                 

国書刊行会について考えると冷静さを保ってはいられない。この版元の愛読者であるだけでなく、私の最初の就職先でもあるからだ。思い出は数え切れない。(……)最初の編集担当書は、丸田明生教授の『ヘミングウェイの女性たち』だった。仕事をするだけで勉強にもなる編集業務の「お得感」に驚嘆すると同時に、そのむずかしさに嘆息した。