ニコライアストルップ

ニコライ・アストルップ

創造する庭  

トーヴェ・ハウグスボー/スサンナ・ペッテルソン 監修・執筆
ケシア・E. ハルヴォシュルー/カーリ・グレーヴェ/冨田章/森本陽香/橋口由依/一宮文香/森万由子 執筆

発売日 2026/11/16

判型 A4変型   ISBN 978-4-336-07906-0

ページ数 304 頁   Cコード 0071

定価 3,300円 (本体価格3,000円)

【内容紹介】

ノルウェーの豊かな自然に根ざし、独自の芸術世界を築いた画家、ニコライ・アストルップ(1880–1928)。
20世紀初頭のノルウェーを代表する芸術家の一人であり、近年、世界的に評価が高まりつつあるアストルップの日本初となる本格的回顧展「ニコライ・アストルップ 創造する庭」の公式図録。

険しい山々に囲まれた西ノルウェーの湖畔の村、ヨルステル。アストルップは生涯にわたって故郷の風土を深く愛し、季節や天候によって刻々と表情を変える自然と、そこに暮らす人々の営みを描き続けた。白夜の空に炎が立ち昇る神秘的な夏至祭、雪解けの春を迎える山々、雨に濡れて輝く木々の緑、花々が咲き乱れる庭。鮮烈な色彩と自由な造形によって描き出された風景には、自然の生命力と、土地に根ざした人々の記憶や感情が息づいている。
アストルップの芸術を理解するうえで欠かせないのが、彼自身が丹精込めて造り上げた「庭」の存在である。ヨルステルの急斜面に築かれた自宅の庭で、彼は自ら土を耕し、種をまき、植物を育てた。そこは一家の食卓を支える生活の場であると同時に、尽きることのない芸術的インスピレーションの源でもあった。自然を単に眺め、描くのではなく、土に触れ、植物を育て、季節の移ろいを全身で感じながら制作する。その営みから生まれた作品には、独特の瑞々しさと生命感が満ちている。
また、アストルップはきわめて独創的な木版画家でもあった。日本の浮世絵から影響を受けながらも、油絵具を用いて摺り、さらに手彩色や加筆を施すなど、独自の技法を探究した。同じ版木から生み出された作品であっても、色彩や細部は一枚ごとに異なり、それぞれが一点ものの絵画のような個性を放っている。油彩画と木版画の境界を自在に行き来するその表現は、美術史の中でも際立ってユニークなものである。
本書では、濃密な色彩に満ちた油彩画をはじめ、多彩なヴァリエーションを持つ木版画や版木、テキスタイル・デザインなどを通じて、アストルップの創作の軌跡をたどる。故郷の自然と暮らし、庭づくりへの情熱、そして日本美術との出会い。多角的な視点から、これまで日本ではほとんど知られてこなかった画家の豊かな芸術世界を紹介する。

【著者紹介】

トーヴェ・ハウグスボー

美術史家(PhD)、ニコライ・アストルップ研究センター所長、コーデ・ベルゲン美術館シニアキュレーター。ニコライ・アストルップについて幅広い調査研究の実績があり、アストルップに関する多数の編著書がある。本展企画・監修および執筆者。

スサンナ・ペッテルソン

美術史家(PhD)、フィンランド文化財団准教授兼CEO。ストックホルム国立美術館の館長、ヘルシンキのアテネウム美術館の館長を歴任。本展企画・監修および執筆者。

ケシア・E. ハルヴォシュルー

美術史家(PhD)、コーデ・ベルゲン美術館研究員、ニコライ・アストルップ研究センター研究員。ニコライ・アストルップの芸術に関する調査研究、資料編纂、目録化をおこない、特に版画作品を重点的に扱っている。アストルップに関する出版に多数の協力実績がある。本展共著者。

カーリ・グレーヴェ

紙作品修復家、ノルウェー国立美術館前職。紙作品を専門とする修復家であり、紙作品の修復・技法調査・研究において広範囲にわたる実績をもつ。ノルウェー国立美術館でさまざまな役職を歴任。修復および紙に関する幅広い出版物への寄稿多数。著書に『ニコライ・アストルップ全作品 木版画編』(2010年)。

冨田章 (トミタアキラ)

美術史家、東京ステーションギャラリー館長。専門は日本、フランス、ベルギーの近代美術史。おもな著書に『偽装された自画像』(2014年)、担当したおもな展覧会に「シャガール 三次元の世界」展(2017年)、「メスキータ」展(2019年)などがある。

森本陽香 (モリモトハルカ)

名古屋市美術館学芸員。専門は西洋近代美術、現代美術、デザイン。担当したおもな展覧会に、「福田美蘭 美術って、なに?」(2023年)、「藤田嗣治 絵画と写真」(2025年)、「スウェーデン・テキスタイル 暮らしと自然に息づく北欧デザイン」(2026年)などがある。

橋口由依 (ハシグチユイ)

神奈川県立近代美術館学芸員(保存修復担当)。専門は、油彩画の保存修復。担当したおもな展覧会に「鎌倉別館40周年記念 てあて・まもり・のこす 神奈川県立近代美術館の保存修復」(2024年)、「川口起美雄 Thousands are Sailing」(2025-26年)などがある。

一宮文香 (イチノミヤフミカ)

山口県立美術館学芸員。専門は、イタリア近代美術。担当したおもな展覧会に「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」(2026年)がある。

森万由子 (モリマユコ)

東京ステーションギャラリー学芸員。専門は、フランス近代美術。おもな著書・論文に「モーリス・ドニの公共建築装飾」(2023年)、『近代都市と絵画 パリからニューヨークへ』(共著、2024年)などがある。