シェイプス・オブ・ワンダー
Shapes of Wonder
つやま自然のふしぎ館 全剝製
村松桂 著
発売日 2026/03/25
判型 A5判 ISBN 978-4-336-07837-7
ページ数 880 頁 Cコード 0072
定価 8,800円 (本体価格8,000円)

【内容紹介】
視線があちこちに谺するあの場所は、
祈りの満ちる場所なのだろうか。
60年超の時を経た――
博物館の全剝製
暗闇に浮かぶヴンダーカンマー
モノクローム・ポートレイト801体。
世界の哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、
すべての剝製801点を撮影した動物たちのポートレイト。
ブックデザイナー・サイトヲヒデユキによる、
造本も美しい函入りの豪華写真集。
岡山県津山市に一見風変わりな博物館がある。創立者・森本慶三の遺言で本人の臓器が展示されていることで知られるが、これは「人体の神秘」を伝えるキリスト者・慶三の思想の反映である。そして、私設博物館としては800体を超える剝製の展示は稀有である。そこにはワシントン条約以前の、今や入手不可能な鳥・動物の数々が含まれている。
この剝製に魅せられたのが写真家・村松桂である。
「ほのかに香る樟脳の匂いや聞きしにまさる怪しい雰囲気に触れ、まるで秘宝館や見世物小屋にいるような気持ちだった。でもしばらくして、展示されている創設者・森本慶三の臓器や、展示に至るきっかけとなった彼の遺書の写し、設立趣旨、歩けど歩けど続く展示室に並ぶ剝製たちを見ているうちに、今まで感じたことのない気持ちがこみ上げてきた。あとから思うと、そのとき私は美術館で有名な名画を観たり、観光地で絶景を見るときよりも、まるで心の傷になって残るほど、その場で何かを受け取ったのだ」
博物館に通い続けて17年余――
「ふしぎ館が60周年を迎えた2023年、館の協力のもと剝製全点の撮影を行い、はじめて剝製ひとつひとつと向き合ってその目の中を覗き込んだ。剝製の中で唯一“本物”ではないガラスやプラスチックの目は、こちらを見ているようでいてどこか遠くを見ているような、こちらの感動や同情や恐怖をすべてはね返しながらも受け入れるような、深い闇、眩しすぎる光のようだった。そして、見ることと祈ることは似ているような気がした。
まるで何かを熱心に見ているような剝製たちを見ている私たち。視線があちこちに谺(こだま)するあの場所は、祈りの満ちる場所なのだろうか。
信じることができない私にも、ただ見る/祈ることはできるかもしれない」
【著者紹介】
村松桂 (ムラマツカツラ)
写真家・アーティスト。1978年東京都生まれ。2002年日本大学芸術学部写真学科卒業。記憶やアーカイブといったキーワードのもと、“見ること”や写真のもつ瞬間性に疑いを投げかけるような作品を制作。発表は書籍という形態を中心に行われ、本というメディアの可能性も探求している。主な展覧会に「viridarium」(NAZUKARI WAREHOUSE、2023)、「Natura naturans」(つやま自然のふしぎ館、2019)、「FLUCTUS」(GALERIE KISOU、2017)、「Urvan/Ruvan」(書肆サイコロ、2014)など。