アフリカ文学の愉楽 2

ムユウノダイチ

夢遊の大地

ミア・コウト 著
伊藤秋仁 訳

発売日 2025/11/20

判型 四六変型判   ISBN 978-4-336-07697-7

ページ数 400 頁   Cコード 0097

定価 3,080円 (本体価格2,800円)

シリーズ: アフリカ文学の愉楽 (アフリカブンガクノユラク)
これまで日本で語られることの少なかった20世紀後半から現代までの芳醇なアフリカ文学の世界を本格的に紹介し、そして遠く離れた日本の読者が抱くアフリカへの印象をより豊かなものへとする新海外文学シリーズ。 収録される作家の多くは、本邦初訳にして、本邦初紹介となる第一線で活躍する作家である。また、ひとつの地域や特定の言語圏による作家だけでなく、できる限りさまざまな立ち位置の作家による作品の収録を心がけた。 収録作品の選定にあたっては、まずなによりも本シリーズのどれか1冊でも手にとってくださった方々を愉しませ、驚かせられるような「物語」としての面白さと強度をもった文学作品を重視した。 《アフリカ文学の愉楽》。それは甘いかもしれないし、苦いかもしれない。「あなたの人生を決定づける」傑作かもしれないし、「なんだこれは!?」と思わざるを得ない摩訶不思議な怪作かもしれない。しかし、読書とは、ひいては芸術の愉楽とは、『触れてみないとわからないものに触れてみる』、その大いなる賭けではないだろうか。 本シリーズでしか味わうことのできない、読書の愉楽がここにある。

【内容紹介】

現代アフリカ文学の最前線を紹介する、新海外文学シリーズ《アフリカ文学の愉楽》第2回配本!

現代アフリカ文学最重要作家、モザンビーク出身のミア・コウトの長篇デビュー作にして映画化もされた代表作がついに登場!

【あらすじ】
長引く内戦に荒廃した東アフリカ、モザンビーク。
ひとりの老人と、記憶を失った少年が、戦火を逃れ、どこまでも続く道路を歩いている。
焼け焦げたバスの傍らで、彼らは血まみれの死体と殴り書きされた何冊ものノートを見つける。頁に残された男の名はキンヅ。文字の読める少年は老人にノートを読み聞かせはじめ、やがて物語はキンヅの遍歴とパラレルに進んでゆく。
現実とおぼしき老人と少年の世界、夢とも事実ともつかないキンヅの旅と人生。過去と現在が溶け合い、記憶と語りが幻想へと変容する。
果たして夢遊の大地に翻弄されるふたりの行き着く先は……。

【作品紹介】
その業績に対して、2007年にはアフリカ人としてはじめてラテン連合文学賞を、二〇一三年にはポルトガル語圏でもっとも重要な文学賞のカモンイス賞を、そして2014年にはノーベル文学賞に次ぐ権威があるとされるノイシュタット国際文学賞を受賞。さらに2025年には、ポルトガル語圏の作家としてはじめてPEN/ナボコフ賞国際文学賞を受賞するなど、現在に至るまで精力的に詩・短篇・長篇・評論とさまざまな作品を発表し続けているミア・コウト。
ポルトガル語圏を超えて世界中で読み継がれている長篇デビュー作にして代表作がついに登場!

◉《アフリカ文学の愉楽》全6巻◉
【編集委員】
粟飯原文子、桑田光平、中尾沙季子、中村隆之、福島亮

◆アラン・マバンク(コンゴ共和国)
【第1回配本】
『割れたグラス』桑田光平 訳
バー"ツケ払いお断り"を舞台に繰り広げられる、酔いどれたちのめくるめく狂想曲!
コンゴ共和国出身、現代アフリカ文学随一のヒップスターによる代表作。

『ヤマアラシの回想』桑田光平・福島亮 訳
その国には分身遣いがいるという――
人間の〈分身〉として生き、殺人を定めとされた一匹の雄ヤマアラシが語る人間界の悲喜劇。
人間の内奥を抉り出す、マバンクのルノドー賞受賞作。

◆ミア・コウト(モザンビーク)
【第2回配本】
『夢遊の大地』伊藤秋仁 訳
長引く内戦で荒廃したモザンビーク。
記憶喪失の少年とひとりの老人の幻想的な彷徨を、言葉遊びや詩的な描写を自由自在に駆使して、アフリカ的な幻想と現実が入り混じったイメージを浮かび上がらせる、カモンイス賞受賞作家のデビュー作にして世界中で読み継がれている代表作。

◆サミ・チャック(トーゴ)
『エルミナ』福島亮 訳
キューバやメキシコなどのさまざまな場所を舞台に、魔性の美少女とそれに魅せられた青年の淫靡な実践の数々。
「アフリカのサド」の異名をほしいままにするサミ・チャックが、プラトンから山田詠美、さらには作中小説『エルミナ』まで、めくるめく引用を重ねながら綴る、悦楽と残酷に満ちた代表作。

◆レオノラ・ミアノ(カメルーン)
『影の季節』粟飯原文子 訳
カメルーンのドゥアラを舞台のモデルに、口承によって受け継がれてきた太平洋横断奴隷貿易の起源に迫るフェミナ賞、メティス小説大賞受賞作。

◆アクウェケ・エメズィ(ナイジェリア)
『フレッシュウォーター』粟飯原文子 訳
ナイジェリア南部に暮らすアダは気性の激しい扱いにくい子どもだった。イボの言い伝えによれば、精霊オバンジェとして生まれた子はたいてい幼いときに死ぬが、オバンジェのアダは生き延びて16歳で大学進学のために渡米する。やがてアダの中の精霊/自己たちが力を増していき、痛ましい事件の後、名前を持つ存在が前面に現れ、身体を支配するようになるが……。
「複数のわたし」と対話し、折り合いをつけることとはどういう経験なのか。
いま世界でもっとも注目される作家のひとり、エメズィの鮮烈なデビュー作にして自伝的小説。
PEN/ヘミングウェイ賞最終候補作。

【著者紹介】

ミア・コウト (ミア・コウト)

1955年、モザンビークのベイラに生まれる。
10代から文学活動をはじめ、医科大学で医学を学びながらジャーナリストとしてモザンビークの独立や内戦に立ち会う。1985年にはジャーナリストを辞し、生態学を専門とする生物学を学ぶ。
1992年に長篇デビュー作である本書『夢遊の大地』を発表。モザンビーク作家協会全国小説賞を受賞し、ジンバブエ国際ブックフェアが選定する「20世紀最高のアフリカ文学12作」の1作にも選出される。2007年には映画化もされ、20以上の言語に翻訳された代表作として知られる。
その全業績に対して、2007年にはアフリカ人としてはじめてラテン連合文学賞を受賞、2013年にはポルトガル語圏でもっとも権威あるカモンイス賞を受賞、2014年にはノーベル文学賞に次ぐとされるノイシュタット国際文学賞を受賞、さらに2025年にはポルトガル語圏の作家としてはじめてPEN/ナボコフ国際文学賞を受賞している。
自身を生物学者と称しながら、現在に至るまで精力的に作品を発表し続け、現代アフリカ文学の最重要作家のひとりとしてポルトガル語圏の国々を超えて世界的に高く評価されている。

伊藤秋仁 (イトウアキヒト)

1965年愛知県生まれ。京都外国語大学外国語学部ブラジルポルトガル語学科教授。
主な著書に『ブラジルの歴史を知るための50章』(編著、明石書店)、『ブラジル国家の形成』(共著、晃洋書房)など。訳書に『ブラジル文学傑作短篇集』(共訳、水声社)、ドラウジオ・ヴァレーラ『女囚たち――ブラジルの女性刑務所の真実』(水声社)、『カランヂル駅――ブラジル最大の刑務所における囚人たちの生態』(春風社)、アンソニー・W・マークス『黒人差別と国民国家――アメリカ・南アフリカ・ブラジル』(共訳、春風社)、エドワード・E・テルズ『ブラジルの人種的不平等』(共訳、明石書店)など多数。