オーストリア綺想小説コレクション 3

メルヒオールドロンテノテンセイ

メルヒオール・ドロンテの転生

パウル・ブッソン 著
垂野創一郎 訳

発売日 2025/07/24

判型 四六変型判   ISBN 978-4-336-07682-3

ページ数 346 頁   Cコード 0097

定価 4,400円 (本体価格4,000円)

シリーズ: オーストリア綺想小説コレクション (オーストリアキソウショウセツコレクション)
千年の歴史を誇り、最盛期には広大な領土を保有していたハプスブルク帝国。しかし第一次世界大戦が終わると、それは中欧の小共和国と化してしまった。いままで存在しているとばかり思っていた「帝国」は空疎な幻だったのか。 しかし失われた帝国への想いは、その後も見果てぬ夢として、もともとあった奇矯さを誇張されながら生きながらえ、ある種の作家の尽きせぬ霊感の源となった。そこでは世界は迷宮でなければならない。煩雑な官僚制度が支配していなくてはならない。モーツァルトが絶えず奏でられてなくてはならない。何より、その日その日を愉快に暮らすために存在する巨大な遊園地でなければならない...... このコレクションは、今まであまり知られていなかったそうした作家・作品を精選し、オーストリアの豊饒な幻想世界をその一端なりとも紹介しようとするものである。【全3巻】

【内容紹介】

わたし、ゼノン・フォラウフには前世の記憶があった。以前の彼は十八世紀ドイツの男爵家の息子メルヒオール・ドロンテであり、幼い頃、回教僧の蠟人形に命を救われていた。成長して学生となった彼は放蕩と決闘沙汰の末、軍隊に身を投じる。戦争の苛酷な現実に死を決意した時、謎の回教僧が現れ再び彼を救った。その後も回教僧は折にふれ姿を現し、運命に翻弄され流浪を続ける彼の人生を導くのだった。そして物語の舞台は大革命下のパリへ。悪魔の誘惑、処刑台の悪夢、ワルプルギスの魔宴、交霊術、予言と幻視など、超自然・オカルト的要素が全篇を彩る、若き主人公のピカレスクな冒険と、魂の遍歴を描く神秘転生譚。

装丁 コバヤシタケシ

【著者紹介】

パウル・ブッソン (パウル・ブッソン)

1873年、オーストリアのインスブルックに生まれる。医学を修めたのち軍に志願するも健康を害して退役、文筆に転じて日刊紙『新ウィーン日報』や諷刺雑誌『ジンプリツィシムス』に寄稿し始める。また通信員としてバルカン半島の諸地方に赴き、第一次世界大戦中は戦時特派員として活躍、戦後は創作に専念した。詩や劇作のほか、怪奇幻想的な小説で知られる。主な作品に『怪奇譚集』(1919)、『F・A・E』(20)、『メルヒオール・ドロンテの転生』(21)、『炎の精』(23)など。1924年没。

垂野創一郎 (タルノソウイチロウ)

1958年、香川県生まれ。東京大学理学部卒。訳書に《オーストリア綺想小説コレクション》全3巻(国書刊行会)、ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』『ボリバル侯爵』『スウェーデンの騎士』(国書刊行会)、『アンチクリストの誕生』(筑摩書房)、マイリンク『ワルプルギスの夜』(国書刊行会)、ボルヘス/フェラーリ『記憶の図書館 ボルヘス対話集成』(国書刊行会)、バルドゥイン・グロラー『探偵ダゴベルトの功績と冒険』(東京創元社)、編訳書『怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(国書刊行会)など。