オーストリア綺想小説コレクション 1

ハイキョケンチクカ

廃墟建築家

ヘルベルト・ローゼンドルファー 著
垂野創一郎 訳

発売日 2024/12/13

判型 四六変型判   ISBN 978-4-336-07680-9

ページ数 467 頁   Cコード 0097

定価 4,620円 (本体価格4,200円)

シリーズ: オーストリア綺想小説コレクション (オーストリアキソウショウセツコレクション)
千年の歴史を誇り、最盛期には広大な領土を保有していたハプスブルク帝国。しかし第一次世界大戦が終わると、それは中欧の小共和国と化してしまった。いままで存在しているとばかり思っていた「帝国」は空疎な幻だったのか。 しかし失われた帝国への想いは、その後も見果てぬ夢として、もともとあった奇矯さを誇張されながら生きながらえ、ある種の作家の尽きせぬ霊感の源となった。そこでは世界は迷宮でなければならない。煩雑な官僚制度が支配していなくてはならない。モーツァルトが絶えず奏でられてなくてはならない。何より、その日その日を愉快に暮らすために存在する巨大な遊園地でなければならない...... このコレクションは、今まであまり知られていなかったそうした作家・作品を精選し、オーストリアの豊饒な幻想世界をその一端なりとも紹介しようとするものである。【全3巻】

【内容紹介】

世界の終わりを目の当たりにした語り手は、廃墟建築家の設計した葉巻形の巨大地下シェルターに誘いこまれる。そこで彼が夢みるのは、カストラートの七人の姪が代わる代わる語る不思議な物語。もしかしたらこちらが現実で、葉巻シェルターのほうが夢ではあるまいか。『サラゴサ手稿』風の語りの入れ子構造を持ちながら、次々繰りだされる挿話の渦は、その枠さえなしくずしに解消してしまう。音楽への愛にあふれ、オーストリア・バロックの粋をこらした魔術的遠近法。

装丁:コバヤシタケシ

【著者紹介】

ヘルベルト・ローゼンドルファー (ヘルベルト・ローゼンドルファー)

1934年イタリア、ボルツァーノ近くの町グリースで生まれる。年にミュンヘンに移住。舞台美術家を目指したのち法律家に転身し、ミュンヘンの区裁判所判事およびナウムブルクの上級地方裁判所判事を歴任。主な小説作品には『廃墟建築家』(69)、『中国の過去への手紙』(83)、『黄金聖者あるいはコロンブスがヨーロッパを発見する』(92)があり、他に歴史書や伝記などにも健筆をふるう。また作曲も手がけた。2012年没。

垂野創一郎 (タルノソウイチロウ)

1958年、香川県生まれ。東京大学理学部卒。訳書にペルッツ『夜毎に石の橋の下で』『ボリバル侯爵』『スウェーデンの騎士』(国書刊行会)、『アンチクリストの誕生』(筑摩書房)、マイリンク『ワルプルギスの夜』(国書刊行会)、ボルヘス/フェラーリ『記憶の図書館 ボルヘス対話集成』(国書刊行会)、バルドゥイン・グロラー『探偵ダゴベルトの功績と冒険』(東京創元社)、編訳書『怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(国書刊行会)など。