ソシテワタシタチノモノガタリハセカイノモノガタリノイチブトナル

そして私たちの物語は世界の物語の一部となる

インド北東部女性作家アンソロジー  

ウルワシ・ブタリア 編
中村唯 監修

発売日 2023/05/26

判型 四六判   ISBN 978-4-336-07441-6

ページ数 288 頁   Cコード 0097

定価 2,640円 (本体価格2,400円)

【内容紹介】

バングラデシュ、ブータン、中国、ミャンマーに囲まれ、
さまざまな文化や慣習が隣り合うヒマラヤの辺境。
きわ立ってユニークなインド北東部から届いた、
むかし霊たちが存在した頃のように語られる現代の寓話。女性たちが、物語の力をとり戻し、
自分たちの物語を語りはじめる。本邦初のインド北東部女性作家アンソロジー。

一九四四年四月、日本軍がやってきた。軍靴で砂埃を立てながら、行進してきた。先頭の男は村人たちに呼びかけ、こう言った。「食料と寝起きする場所を提供してくれれば、あなたがたに害は及ばない。我々はあなたがたの友人だ。我々はあなたがたを解放するために来た。あなたがたを傷つけることはない」(「四月の桜」)

「これにはどんな富よりも値打ちのある宝物が入っている。死ぬ前におまえに渡したい。昔、語り部から手渡されたものを、おまえに手渡すよ」ウツラはその壺をわたしの頭の中に入れた。……何週間か経ってウツラは死んだ。……お話を語るときわたしは別の人間になった。生き生きした。それからずっと語り続けている。(「語り部」)

わたしたちは首狩り族の末裔だったが、いまはインド政府が提供してくれる資金に頼っていた。わたしたちは平地人とは違っていた。彼らは……反政府分子がいないか見張ってもいた。現代生活が、伝統的な慣習や行動とぎこちなく共存していた。(「いけない本」)

黒柳徹子さん推薦!



面白かった。私はインドには、ユニセフの親善大使として、一度、行ったことがある。非常に日本と似ている所、非常に違う所があると思った。インド北東部の女性作家たちの作品はデリケートに心の動きが書いてあり、生き生きと、また沈鬱に訴えかける。物語の結末は、思い切りがよく、また、まとまっていないようで、長いこと心の中にしまってあったものが、ひょいと出て来た、という風であった。

【著者紹介】

ウルワシ・ブタリア (ウルワシブタリア)

デリー大学で英文学、ロンドン大学で南アジア研究の修士号を取得。イギリスのセイジ出版社に編集者として勤務した後、インドに帰国。1975年の国際女性年や1977年のインドの民主化運動で女性運動に関わり、1983年に、インド初のフェミニスト出版社であるカーリー出版社を設立。現在、インドを代表する女性知識人として国内外で知られる。デリー大学など複数の大学で教鞭を執るほか、講演やメディアで活動。『沈黙の向こう側』(1998年、邦訳 明石書店 2002年)は日本を含む多数の言語に翻訳され各国の賞を受賞。2011年、インドの国民名誉賞であるパドマ・シュリー賞を受賞。

中村唯 (ナカムラユイ)

笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ主任研究員。タイの新聞社、国際交流基金バンコク日本文化センター勤務などを得て、財団、シンクタンク、国際協力機構(JICA)にて、南アジアの地域開発や人材育成に関わり、2015年9月から現職。インパール平和資料館、インド北東部視聴覚アーカイブの設立など、インド北東部を中心にインド事業を担当。タイ国立カセサート大学、英サセックス大学開発研究所修了。「終戦記念日 特別寄稿 インパール作戦 前編・後編」(講談社『クーリエ・ジャポン』)のほか、インドの社会起業家、ジェンダーや女性支援に関するエッセイや論文など多数。