シリーズ 宗教学再考 8

シュウキョウノイミトシュウキョク

宗教の意味と終極

ウィルフレッド・キャントウェル・スミス 著
保呂篤彦/山田庄太郎 訳
八木久美子 解説

発売日 2021/03/18

判型 A5判   ISBN 978-4-336-07118-7

ページ数 528 頁   Cコード 0314

定価 6,820円 (本体価格6,200円)

シリーズ: シリーズ 宗教学再考 (シリーズ シュウキョウガクサイコウ)
世界的な古典とされる重要文献を本邦初訳及び新訳で収録し、古今東西の宗教現象を21世紀に再考する宗教学の一大叢書。 近代以降、「宗教」という言葉を用いて、我々はいかに思考してきたのか。古今東西の宗教現象をつかもうとしたこの営みを、21世紀の今、我々はどのように評価すべきか。英、仏、独、蘭の各言語圏の重要文献を本邦初訳、および別々に翻訳されていたものを一冊に新訳で収録し、「宗教」をめぐる基礎概念の始まりから、「宗教」という言葉そのものの問い直しに至るまでを見渡し、宗教学という枠組を今再考する。 編集委員/島薗進・鶴岡賀雄・山中弘・松村一男・深澤英隆・山﨑亮・奥山倫明・杉村靖彦・久保田浩・江川純一 企画協力/南山宗教文化研究所

【内容紹介】

新しい宗教学をめざして――
異なる信仰を持つ人々が、ともに合意できる宗教理解とはなにか?

カナダ生まれのキリスト教の聖職者にしてイスラーム学者であり、エリアーデと並ぶその時代を代表する宗教学者ウィルフレッド・キャントウェル・スミスの待望の主著。
「宗教」概念の形成過程を辿り、非西欧の現象をも精査し、近代的宗教理解の欠陥を指摘。スミスのまなざしはキリスト教を超え、「累積的伝統」と「信仰」の二概念を提唱し、人間の生の理解としての宗教学を志す。
諸宗教の共存の未来へ新たなパラダイムを提起する宗教概念批判のさきがけ、現代の古典。
〈シリーズ 宗教学再考〉第1回配本

【〈シリーズ 宗教学再考〉創刊!】
これからの「宗教」のために――
近代以降、「宗教」という言葉を用いて、我々はいかに思考してきたのか。
古今東西の宗教現象をつかもうとしたこの営みを、二一世紀の今、我々はどのように評価すべきか。
英、仏、独、蘭の各言語圏の重要文献を本邦初訳、および別々に翻訳されていたものを一冊に新訳で収録し、「宗教」をめぐる基礎概念の始まりから、「宗教」という言葉そのものの問い直しに至るまでを見渡し、宗教学という枠組を今再考する、画期的な一大叢書。

【創刊の言葉】
19世紀の最後の四半世紀から20世紀前半にかけて、「宗教」を近代的な学知の枠組みで捉えようとする試みが花開いていく。この〈シリーズ 宗教学再考〉では、まずこの時期の重要な著作だが、これまで日本語では読みにくかった著作を取り上げている。先行のシリーズ〈宗教学名著選〉とあわせて、宗教学の基礎が整えられていく時期の重要著作が見渡せることになる。
「宗教現象学」や「宗教人類学」の重要な著作、そしてフランス「社会学年報」の著作群は宗教学の歴史を振り返る上で欠かせないものである。社会学の基礎づけに宗教論が不可欠だったデュルケームやウェーバーらの宗教論、宗教についての考察と無意識についての理論が切り離せないものだったフロイトやユングの理論、宗教学という分野に堅固な枠組みを与えようとしたオットーやエリアーデらの仕事を深く理解しようとするとき、これらの著作の理解が大いに役立つことだろう。
〈シリーズ 宗教学再考〉では、さらにそれに引き継ぐ時期、1970年代ぐらいまでの時期の著作で、すでに古典としての地位が定まっている著作を取り上げている。20世紀末以降、宗教学の基礎理論に不可欠のもととなった「宗教」概念論の先駆的な業績をまとめたキャントウェル・スミス、宗教現象学の手法を取り入れながら現代哲学と宗教論を媒介しようとしたポール・リクール、広い視野に立った宗教学史をまとめその後の宗教学史の基盤を固めたエリック・シャープの著作を収める。
21世紀の現代世界においても宗教はグローバル社会のゆくえに関わる重要なプレーヤーである。また、現代世界に生きる個々人にとっても、自らの生き方を振り返り、倫理観や死生観を確かめようとするとき、宗教について考え直すことは大きな意義をもち続けている。
そして、宗教についての奥深い理解を得ようとするとき、宗教学の歴史を振り返り、すぐれた先人たちの業績に学ぶことが大いに助けとなる。この〈シリーズ 宗教学再考〉がそのような読者たちの手に届くことを願っている。
(〈シリーズ 宗教学再考〉編集委員 島薗進)

【著者紹介】

ウィルフレッド・キャントウェル・スミス (ウィルフレッド・キャントウェル・スミス)

Wilfred Cantwell Smith 1916-2000
1916年カナダ・トロント生まれ。17歳の時にエジプトに滞在。トロント大学で中近東の言語・歴史を、ケンブリッジ大学でキリスト教神学とイスラーム学を修める。第二次世界大戦後、英領インド・ラホールのフォーマン・キリスト教大学でインド史・イスラーム史を講じ、カナダのマギル大学のイスラーム研究所初代所長、ハーヴァード大学の世界宗教研究所所長などを歴任。プロテスタントでありながらイスラーム学者として活躍するとともに、比較宗教学者として信仰を異にする者どうしの交流を研究の場に導入し、従来のキリスト教神学を超える「世界神学」を目指した。邦訳に『現代イスラムの歴史』(中公文庫)、『宗教の真理』(理想社)、『世界神学をめざして』(明石書店)。

保呂篤彦 (ホロアツヒコ)

1960年大阪府生まれ。1991年筑波大学大学院博士課程哲学・思想研究科修了。筑波大学教授。主な著書に『カント道徳哲学研究序説――自由と道徳性』(晃洋書房)、翻訳書にヨアヒム・ヴァッハ『宗教の比較研究』(共訳、法藏館)。

山田庄太郎 (ヤマダショウタロウ)

1982年茨城県生まれ。2014年筑波大学大学院一貫制博士課程人文社会科学研究科修了。聖心女子大学講師。主な論文に「初期キリスト教における『笑い』――ヘレニズム哲学とキリスト教思想」(『エイコーン』47号)、「アウグスティヌス『告白』の時間論が有する諸特徴について――アリストテレス、プロティノスとの比較から」(『中世思想研究』54号)など。

八木久美子 (ヤギクミコ)

東京大学大学院人文科学研究科修士課程終了。ハーバード大学大学院よりPhD(宗教学)取得。現在、東京外国語大学教授。主な著作は、『神の嘉する結婚――イスラムの規範と現代社会』(東京外国語大学出版会、2020年)、『グローバル化とイスラム:エジプトの「俗人」説教師たち』(世界思想社、2011年)など。