ファシズムヘノヘンリュウ

ファシズムへの偏流  下巻

ジャック・ドリオとフランス人民党  

竹岡敬温 著

発売日 2020/11/20

判型 四六判   ISBN 978-4-336-06664-0

ページ数 297 頁   Cコード 0023

定価 3,520円 (本体価格3,200円)

【内容紹介】

貧しい製鉄工の家に生まれたジャック・ドリオ(1898~1945)は、類まれなる弁舌とカリスマ性でフランス共産党の若き指導者となり、「赤い都市」サン・ドニの市長としても絶大なる人気を誇る。しかし、その信念からコミンテルンに反逆。除名されたのち、共産主義に対する根深い憎悪をたぎらせながら、ファシスト政党「フランス人民党」を結成する。(上巻)。
フランスのドイツへの宣戦布告、休戦協定を経て、ドリオは、反ボルシェヴィズム・フランス義勇団の創設者のひとりとしてドイツ国防軍の制服を着て東部戦線で戦うなど、熱烈なナチス協力者へと変じる。その後ドイツの敗色が濃厚になるなか、ドイツ・マイナウ湖に亡命したドリオは、ヒトラーとも会見。自身の政権を画策するが、1945年、移動中に飛行機からの機銃掃射を受け謎の死を遂げる。(下巻)

もっとも著名なる政治的転向者のひとりジャック・ドリオの謎に包まれた生涯を、政治、経済、社会、思想史などさまざまな背景から丹念にたどり、あらゆる思想がひしめいた激動の二十世紀史をも照射する傑作評伝。


【本書「第五部 フランス人民党 最後の日々」より】
ドリオは、共産主義からファシズムへ移ることによって、ひとつのイデオロギーへの依存からほかのイデオロギーへの依存へ陥ったといえよう、しかし、ドリオの人間的素質、彼の知性、勇気、情緒的きらめき、政治家としての才能を想い起こすならば、このドリオの共産主義からファシズムへの移行は、そして、その過程で彼が遭遇した数々の難局と混乱の光景は、いっそう耐えがたいものとして我々の目に映じよう。我々が追跡し説明しなければならないのは、この目もくらむような不条理な偏流である。

【著者紹介】

竹岡敬温 (タケオカユキハル)

1932年、京都市に生まれる。京都大学文学部卒業、大阪大学大学院経済学研究科博士課程中退。1964年から66年まで、フランス政府給費留学生・文部省在外研究員としてパリ大学文学部、高等研究実習学院第6部門(経済学・社会科学部門)に留学。大阪大学経済学部講師、助教授、教授、大阪学院大学経済学部教授を経て、現在、大阪大学名誉教授、大阪学院大学名誉教授、経済学博士。専門は社会経済史。
主要編著書に、『近代フランス物価史序説』(創文社、1974年)、『概説西洋経済史』共編著、有斐閣、1980年)、Des entreprises françaises et japonaises face à la mécatronique, LEST-CNRS, 1988(共著)、『「アナール」学派と社会史 「新しい歴史」へ向かって』(同文館、1990年)、『新技術の導入 近代機械工業の発展』(共編著、同文館、1993年)、『社会史への途』(共編著、有斐閣、1995年)、『世界恐慌期フランスの社会―経済 政治 ファシズム―』(御茶ノ水書房、2008年)、主要訳書に、シャルル・モラゼ『経済史入門』(共訳、創元社、1961年)、ジョン・ネフ『工業文明の誕生と現代世界』(共訳、未来社、一九六三年)、ジャック・エリュール『技術社会』2巻(共訳、すぐ書房、1976年)、ペーター・フローラ『ヨーロッパ歴史統計 国家・経済・社会 1815-1975』2巻(原書房、1985年)などがある。