関屋貞三郎日記 1

セキヤテイザブロウニッキ ダイイッカン

関屋貞三郎日記 第一巻

茶谷誠一 編

発売日 2018/06/19

判型 A5判   ISBN 978-4-336-06271-0

ページ数 482 頁   Cコード 0321

定価 19,800円 (本体価格18,000円)

シリーズ: 関屋貞三郎日記 (セキヤテイザブロウニッキ)

【内容紹介】

大正期から昭和戦前期の長きにわたって、宮内次官、貴族院議員を務め、戦後には枢密顧問官として憲法改正作業にも携わった関屋貞三郎が書き記した22年分の日記を読みやすく翻刻した、日本近現代史を知るための第一級資料。

■宮内次官時代の日記は、関屋の周囲にいた天皇側近、牧野伸顕、河井弥八、岡部長景、奈良武次らの日記や関係文書と関連づけて読み解くことにより、当時の宮中内部の状況を詳しく理解することができる。
■貴族院議員時代の日記は、日本が日中戦争からアジア太平洋戦争へと戦争の道を突き進む時期に相当し、日記に記された関屋の心境から当時の世相をうかがい知ることができる。
■戦後の枢密顧問官時代の日記からは、関屋が当事者として深くかかわっていた天皇制の存亡や昭和天皇の戦争責任問題に揺れる国内の状況をうかがい知ることができる。

保坂正康氏・古川隆久氏推薦!

◆宮内官僚が残した第一級資料
保阪正康(ノンフィクション作家)

 昭和天皇の本意を確認するには、勅語の分析、御製の解釈、実録の検証、そして側近たちの日記や回想記の熟読などが必要である。とくに重要なのは、天皇周辺に身を置いて日々の動きを見つめ、それを書き残した記録文書である。『木戸幸一日記』『牧野伸顕日記』などはその点で第一級資料である。しかし本当のところ、より重要なのはこうした第一級資料と同様の役割を果たしている宮内官僚の日記である。彼らが拠って立つ目の位置や上級者を補佐する日々の動きの中に昭和天皇の心理を読みとく鍵があるように思う。
 関屋貞三郎は、昭和のもっとも重要な前期に宮内次官の職にあり、日記にはそこでの見聞が忠実に記述されている。大正十年三月から昭和八年二月までの期間は宮内次官、それからは貴族院勅撰議員として敗戦までその職にあった関屋は、元老西園寺公望や宮内大臣、内大臣を務めた牧野伸顕らとの交流も篤く、そして考え方も共通する点が多かった。その点では、近代日本の天皇の実像が、立憲君主制の枠組にあった何よりの証がこの日記からは充分に窺われてくるはずである。昭和天皇の実像はこの人脈によってつくられたという意味で、本書はまさに歴史的遺産といっていいであろう。

◆日本近現代史研究の深化に大きく貢献
古川隆久(日本大学文理学部教授)

 関屋貞三郎は、裕仁皇太子が摂政となり、やがて昭和天皇となって政治の荒波にもまれはじめる時期に宮中で昭和天皇を支えた人々の一人である。今回刊行される「関屋貞三郎日記」のうち、宮内次官時代の部分には、宮中有力者や皇族たちの動向や肉声が記され、貴族院議員(勅選)時代の部分には、彼が属した院内会派研究会、なかでも勅選議員たちの動きが記されている。さらに、全体を通じて、彼が職歴上関与した諸団体(朝鮮協会、国際連盟協会、愛育会、その他)の動きや政治外交への関心の持ち方、交友関係もうかがうことができる。他の昭和天皇側近や貴族院議員の日記、関屋自身の活字化された文章などと突き合わせることで、昭和期における宮中や貴族院の政治史的研究の深化に大きく貢献することはまちがいない。さらに、美術展観覧についての記事も多く、美術史の史料としても有用である。判読しにくい文字で書かれた本日記の翻刻が日本近現代史研究に資すること、きわめて大といわなければならない。

【著者紹介】

茶谷誠一 (チャダニセイイチ)

昭和46(1971)年石川県生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、立教大学・明治大学兼任講師。専攻、日本近現代史。
主な著書に、『昭和戦前期の宮中勢力と政治』(吉川弘文館、2009年)、『宮中からみる日本近代史』(筑摩書房、2012年)、『牧野伸顕』(吉川弘文館、2013年)、『象徴天皇制の成立』(NHK出版、2017年)などがある。