セイノダイチ

聖の大地

旅するオットー  

前田毅 著

発売日 2016/09/07

判型 A5判   ISBN 978-4-336-05998-7

ページ数 376 頁   Cコード 1014

定価 5,280円 (本体価格4,800円)

【内容紹介】

 宗教学の古典として名高い『聖なるもの』の著者ルードルフ・オットー(1869-1937)。宗教理論のもっぱら抽象的な解釈が注目されがちであるが、オットーの関心はむしろ「宗教の生ける現実」にあった!
 さあ、異界との出会いに心ときめかせるオットーの瑞々しい「旅便り」に耳を傾け、彼とともに船出し、ロバの背に揺られ、〈聖の醗酵大地〉をめぐる旅に出よう。
 オットーは、ときには一年近くにもおよぶ遠く長い旅を繰り返している。これらの旅は「オットー宗教学」を生み出した〈母なる大地〉であり、オットー宗教学誕生の秘密がここに隠されている。旅のなかでオットーは、宗教の本質理念として知られた独自な「聖」の観念を生み出し、また比較宗教学の具体的な遂行と、さらには宗教的実践活動の展開を打ち出すことになった。
 オットーの旅便りは宗教経験の秘義を照射し、19世紀末から20世紀初頭にかけての、植民地化に直面したアフリカ、中東、アジア世界の宗教状況を活写した貴重なフィールドノートでもある。
 本書は、主としてオットーが設立した「マールブルク宗教学資料館」所蔵の非公開・未整理の「オットー・アルヒーフ」を駆使し、彼の旅の記録から「聖」の裸像を読み解く、本国ドイツでも成し遂げられていない貴重な試みである。
 神学生から宗教学者になりゆくオットーの軌跡を描き出し、「マールブルク宗教学資料館」へと結実してゆく活動を紐解く「オットー小伝」ともいうべき本書は、学術的著作からだけでは見えない生身のオットーに迫り、オットー研究の未踏の地平を切り拓く。

【著者紹介】

前田毅 (マエダツヨシ)

1938年、姫路生まれ。
1968年、東北大学大学院文学研究科博士課程満期退学。
東北大学文学部(宗教学研究室)助手を経て、1970年より鹿児島大学講師・助教授・教授。
2003年に定年退官し、現在は鹿児島大学名誉教授。
この間1987-88年、マールブルク大学(宗教学資料館)客員研究員。
共著に岡田重精編『宗教学概説』(杉山書店、1991年)がある。