ミンゾクトカメンノシンソウヘ

民俗と仮面の深層へ

乾武俊選集  

乾武俊 著
山本ひろ子/宮嶋隆輔 編

発売日 2015/05/22

判型 A5判   ISBN 978-4-336-05897-3

Cコード 0039

定価 5,940円 (本体価格5,400円)

【内容紹介】

漂泊する仮面の「かたり」に耳を澄ますということ――。民俗文化の深層に分け入り、日本の芸能の謎を探求しつづける伝説の研究者、乾武俊。民俗学者、仮面研究家であると同時に詩人でもある彼が書き継いできた文章を、「被差別」「仮面」「芸能」という視座のもとに編み替え、その豊饒な世界の核心をこの一冊におさめる。「血」の記憶に塗り籠められた仮面と信仰の深層、そして日本芸能史上最大の謎とされる「黒い翁」。――いまその秘密がひらかれる。

【著者紹介】

乾武俊 (イヌイタケトシ)

1921年、和歌山市生まれ。戦時中に和歌山県立日高中学校で初めて教壇に立ち、終戦後は和歌山市内の中学校に務めながら、詩人として活動。第一詩集『面』(東門書房、1952)、第二詩集『鉄橋』(日本未来派発行所、1955)を上梓。1959年、大阪に居を移し、中学校教員として同和教育に深く関わる中で、被差別地域における民話や伝承の聞き取りを積極的に行う。この間、『詩とドキュメンタリィ』(思潮社、1962)、『民話教材と同和教育』(明治図書、1972)を出版。その後、大阪府教育委員会指導主事、和泉市教育次長、和泉市立光明台中学校長を歴任。退職後は大阪府教育委員会などによる大阪府下の民俗調査に参加し、また大阪教育大学の非常勤講師を勤める。大阪芸術大学映像学科との連携で『信太山盆踊り』(1984)など盆踊りの記録を映像作品として残し、また『伝承文化と同和教育―むこうに見えるは親の家』(明石書店、1988)、『民俗文化の深層―被差別部落の伝承を訪ねて』(解放出版社、1995)を出版。伝承や芸能の「うたい」や「かたり」、あるいは身振りから、継承されてきた民衆の記憶の深層を浮かび上がらせる研究活動を続けている。

山本ひろ子 (ヤマモトヒロコ)

1946 年生。早稲田大学第一文学部史学科中退。日本宗教思想史専攻。私塾「成城寺小屋講座」を主宰。和光大学表現学部名誉教授。主な著書に『変成譜―中世神仏習合の世界』(春秋社)、『大荒神頌』(岩波書店)、『中世神話』(岩波新書)、『異神―中世日本の秘教的世界』(ちくま学芸文庫)、編著に『祭礼―神と人の饗宴』(平凡社)、『民俗と仮面の深層へ―乾武俊選集』(国書刊行会)など。

宮嶋隆輔 (ミヤジマリュウスケ)

1990 年、茨城県生まれ。和光大学卒業。成城寺小屋講座で中世芸能史を担当し、「能」以前の猿楽である〈翁〉や〈立合〉などを研究。主要論文に「翁語りのドラマツルギー―〈語りの翁〉から〈舞の翁〉へ」、「三信遠の立合猿楽―懐山おくなり「鞠のかがり」を中心に」など。編著に『民俗と仮面の深層へ―乾武俊選集』(国書刊行会)。