ソウソウボノシンソウ
曹操墓の真相
唐際根 総監修
河南省文物考古研究所 編著
渡邉義浩 監訳・解説
谷口建速 訳
発売日 2011/09/20
判型 四六判 ISBN 978-4-336-05417-3
ページ数 311 頁 Cコード 0022
定価 2,530円 (本体価格2,300円)
【内容紹介】
2009年12月、曹操の墓が発見されたとの知らせが世界を驚かせた。
そしてその後に巻き起こった真偽論争――。
河南省文物局考古隊による発掘の詳細な経緯、盗掘者との闘い、60歳代男性の頭骨や「魏武王」の文字が刻まれた副葬品の発見など、魅力的なエピソードと、カラーを含む多数の墓室内写真、出土品の写真を交えながら「世紀の発見」の謎に迫り、中国でベストセラーとなった考古学ドキュメンタリーの傑作、ついに邦訳。
【週刊読書人(2011年11月4日号)掲載記事より】
「曹操の墓、発見!」。このニュースが二〇〇九年末に報じられたとき、私以外にも多くの人が胸を躍らせたことであろう。河南省安陽市西高穴村で発見された大型墓からは、曹操本人とされる頭骨や「魏武王」の文字が刻まれた文物などが出土した。三国志の英雄であり強大な敵役である曹操は、日本人にとって中国史上最も有名な人物の一人である。歴史的にみても、四百年続いた漢王朝を終わらせ、当時の観念を打破する改革を次々と断行、後世に大きな影響を与えた偉人でありながら、墓の所在は長らく謎とされていた。
「世紀の発見」の興奮の一方、果たして本物なのか、という思いもあった。案の定、すぐに「偽物」説が飛び交った。「本物」説の反論はなかなか報道されず、日本では話題性が薄れたようであった。その間にも中国国内では着々と意見固めが進められ、「曹操墓」は「二〇〇九年全国六大考古新発見」(中国社会科学院)・「二〇〇九年度全国十大考古新発見」(国家文物局など)に選出、学術的“お墨付き”を得たのである。
原著『曹操墓真相』は、発掘を実施した河南省文物考古研究所による、いわば公式の「曹操墓」ガイドブックである。第一章では、発掘に至る経緯や発掘過程がドキュメンタリータッチで語られ、出土文物の解説がなされる。第二章以降では、出土文物・文献史料の両面から墓主の確定を進めるという構成。本書では、「発掘簡報」などを参考資料として加え、「曹操墓」の規模・構造などの基本情報、出土文物の内容、「曹操の墓」と認定された根拠などが一書で掴めるようになっている。
読者には、「曹操墓の真相」に迫る主題の傍ら、活き活きと綴られた発掘のエピソードにも注目していただきたい。「曹操の墓らしきもの」が発見されたにも関わらず、重要な遺跡は「保護が原則」という法令に阻まれ、発掘の認可がおりない。その間に繰り返される盗掘、板挟みとなる担当者の苦悩。いざ発掘が始まると、関係当局からの協力申し出や慰問が殺到、現場では盗掘者への恨みが高まる一方、何と彼らの発明した発掘工具が活躍する……発掘者たちの苦悩、闘いを通して、中国の発掘事情も垣間見えてくる。
最後に、今なおこの墓を「曹操墓」とみなすことに慎重な意見もあることを付け加えておきたい。巻末の渡邉義浩氏による解説では、「曹操墓」に対する客観的な批評が行なわれ、また原著以降の発掘成果についても触れられている。是非最後まで読み進めていただきたい。
(『曹操墓の真相』訳者・谷口建速)
【著者紹介】
唐際根 (トウサイコン)
1964年生。北京大学と中国社会科学院で学び、2004年にイギリス・ロンドン大学で博士の学位を取得。現職は中国社会科学院考古研究所研究員・安陽師範に勤務。長きに渡り中国青銅器時代の考古研究に従事。著書に『考古与文化遺産論集』・『中国古代鉱冶簡史』、共同編集に『多維視域――商王朝与中国早期文明研究』・『安陽殷墟出土玉器』、共同翻訳に『另一種古史――青銅器紋飾・徽識与図像解読』など多数。
河南省文物考古研究所 (カナンショウブンブツコウコケンキュウジョ)
渡邉義浩 (ワタナベヨシヒロ)
1962年生。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了。
文学博士。現在、大東文化大学文学部教授。三国志学会事務局長。
主要著書:『後漢国家の支配と儒教』(雄山閣出版、1995)、『三国政権の構造と「名士」』(汲古書院、2004)、『後漢における「儒教国家」の成立』(汲古書院、2009)、『西晉「儒教国家」と貴族制』(汲古書院、2010)。
谷口建速 (タニグチタケハヤ)
1981年生。早稲田大学文学研究科博士後期課程在籍。
大東文化大学文学部・早稲田大学本庄高等学院非常勤講師。
主要論文:「長沙走馬楼呉簡よりみる孫呉政権の穀物搬出システム」(『中国出土資料研究』10、2006)、「長沙走馬楼呉簡にみえる「限米」――孫呉政権の財政に関する一考察」(『三国志研究』3、2008)、「長沙走馬樓吳簡所見孫吳政權的地方財政機構」(『簡帛』5、上海古籍出版社、2010)。