各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

書評家/ゲーム作家渡辺祐真

《バルトルシャイティス著作集》(全4巻)

学生時代、制度化された学問に不満を感じ、誰も知らないような知に憧れていた。そんな斜に構えた若輩が《バルトルシャイティス著作集》と巡り合うのに時間は要さなかった。中でも惹かれたのは、アナモルフォーズ。正面から見ると謎の物体だが、斜めから見たりすることで像を結ぶ不思議な絵だ。しかもそれが視線の絶対性、ひいては既成の真偽を揺り動かすというのだから夢中にならないはずがない。

『普遍の鍵』(新装版)

パオロ・ロッシ 著 清瀬卓 訳               

こうして正道を踏み外し、西洋文化の裏通りへと足を踏み入れた私が手にしたのは『普遍の鍵』。事物の表層にあらわれているイデアの影を手掛かりに実在の本質を摑み、知を分類する方法論が論じられている。知のもたらす崇高と孤絶を感じた瞬間だった。

『蝶を飼う男 シャルル・バルバラ幻想作品集』

シャルル・バルバラ 著 亀谷乃里 訳               

だから『蝶を飼う男』で描かれる三千匹の蝶と暮らす男が、乱舞する知に囲まれて、美しく孤独に生きる学徒に見えた。蝶は古今東西、神や魂に擬せられるが、国書刊行会の書物にも知の蝶が舞い踊っている。我々はただ彼らと戯れればいい。