各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

書評家/京都芸術大学専任講師江南亜美子

《後藤明生コレクション》(全5巻)

後藤明生 著 いとうせいこう/奥泉光/島田雅彦/渡部直己 編集委員         

編集委員のアシスタントとして(後藤さんの最晩年の教え子たちとともに)編集にかかわり、入手しづらくなっていた小説や随筆を読み直す機会にもめぐまれた。作家はその命が絶えても世に作品がのこるとはよく言われるが、タダジュン装画・川名潤装幀の美しい書物の形態で、いつでも後藤作品の酩酊と潜思が味わえるのはありがたい。

『パウラ、水泡なすもろき命』

イサベル・アジェンデ 著 管啓次郎 訳               

思えば学生時代、文学の世界の広がりを教えてくれたのは《文学の冒険》シリーズである。アレナス、トゥルニエ、プイグ……。その後に読んだ『パウラ』はアジェンデらしい幻想的想像力をも駆使しつつ厳しい現実を捉えた一冊で、わたしのオールタイムベストとなった。

『女であるだけで』(新しいマヤの文学)

ソル・ケー・モオ 著 フェリペ・エルナンデス・デ・ラ・クルス 解説 吉田栄人 訳             

最近も、非主流であるがゆえ不可視とされてきた人々に光をあてた、メキシコの先住民作家による作品群《新しいマヤの文学》の、なかでも『女であるだけで』の峻烈さに、さらに蒙がひらかれた思いがした。