各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

文筆家木澤佐登志

《ロンドンの見世物》(全3巻)

R・D・オールティック 著 小池滋 監訳 浜名恵美/高山宏/森利夫/村田靖子/井出弘之 訳             

機械仕掛けと蒸気のスペクタクルは、ギブスンとスターリングに霊感を与え、帝国主義的欲望が世界中の珍物の蒐集に駆られるなか、バベッジは最初の計算機械の構想に着手する。十九世紀英国、産業製品と大博覧会の時代。《ロンドンの見世物》はそんな当時の時代精神をうかがい知ることのできる重量級の三巻本。

『フランケンシュタインの影の下に』(異貌の19世紀)

クリス・ボルディック 著 谷内田浩正/西本あづさ/山本秀行 訳              

十九世紀英国といえば、やはり《異貌の19世紀》シリーズ。(……)ここではフランス革命以後の理性の時代、すなわち神なき時代における神話としてのフランケンシュタインにメスを入れた『フランケンシュタインの影の下に』を挙げたい。フランケンシュタイン、それは十九世紀を回遊しながら産業資本主義の暗部を逆照射する怪物のミームに他ならない。

『月世界への旅』(世界幻想文学大系44)

マージョリー・ホープ・ニコルソン 著 高山宏 訳               

『月世界への旅』は、十七世紀以来の人文学と科学とが複雑に絡み合う知の領域を博捜しながら、両者の狭間から近代における豊饒なSF的コズミック・ヴィジョンが立ち上がってくる様相を描き出す快著。復刊希望。