各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

翻訳者木原善彦

『なしくずしの死』(上・下)(セリーヌの作品2・3)

ルイ=フェルディナン・セリーヌ 著 高坂和彦 訳               

私の中で国書刊行会のイメージカラーは黒。拙訳のギャディス『JR』が黒い装幀だったからではない。セリーヌの文体に魅了された学生時代の私が奮発して買った『なしくずしの死』が黒かったからだ。黒い函に収められた本は表紙ばかりか小口まで黒く、それがまたセリーヌを読む背徳感に拍車をかけた。

『完全な真空』(文学の冒険)

スタニスワフ・レム 著 沼野充義/工藤幸雄/長谷見一雄 訳           

国書刊行会には実験的な海外小説の版元というイメージもある。《文学の冒険》シリーズは英語圏以外の作品も多い。中でも大きな衝撃を受けたのはレム『完全な真空』。そこには私の読みたい風変わりな(架空の)小説の書評が集められていた。

『重力の虹』(Ⅰ・Ⅱ)(文学の冒険)

トマス・ピンチョン 著 越川芳明/佐伯泰樹/植野達郎/幡山秀明 訳         

国書刊行会と言えば〝刊行予告〟期間が長いというイメージも。個人的に最も待たされたのはピンチョンの『重力の虹』。あれはインターネット普及以前では、最後の巨大翻訳プロジェクトだったのではないか。国書刊行会さんには今後も、黒い装幀の実験小説を続々と〝刊行予告〟していただきたいと思う。