各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

国際日本文化研究センター名誉教授小松和彦

『絵本百物語 桃山人夜話』

京極夏彦 他文 多田克己 編               

怪異妖怪研究者である私は、国書刊行会が関連書籍をたくさん刊行されているので、これまで随分とお世話になってきた。このため、そのうちから三冊を挙げよ、ということになると悩ましい。(……)江戸期の妖怪絵巻や図鑑・絵本類を、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』を筆頭にたくさん刊行されているが、ここでは代表として、親しみやすいカラー版の『絵本百物語』を挙げることにした。

『百物語怪談集成』(正・続)(叢書江戸文庫2・27)

太刀川清 校訂                 

妖怪絵関連の書籍とともにありがたかったのは、高田衛・原道生責任編集の《叢書江戸文庫》であるが、その中でも特に『百物語怪談集成』(正・続)は、当時の怪異妖怪観を知る上で参考になる資料で、何度も読み返し、私の必読書の一つになっている。

『怪異の表象空間 メディア・オカルト・サブカルチャー』

一柳廣孝 著                 

近世に比べて未だ手薄の観がある近代に関しては、最近、吉永進一たちの共同研究の興味深い成果『近現代日本の民間精神療法 不可視なエネルギーの諸相』を刊行されているが、ここはやはり、文学の立場から出発し、分野を超えて幅広くこの方面の研究を進めてきた一柳廣孝の代表作の一つ『怪異の表象空間』を挙げるべきだろう。