各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

作家/クリエーターいとうせいこう

《後藤明生コレクション》(全5巻)

後藤明生 著 いとうせいこう/奥泉光/島田雅彦/渡部直己 編集委員         

今回依頼をいただき、編集委員に加わった《後藤明生コレクション》を除いて自分がどんな「国書刊行会本」を持っていたかをきちんと把握していないことに気づいた。(……)後藤明生だって〝迷宮〟路線で読むとがぜん面白いわけで、出させてもらって感謝している。

『夢のウラド F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集』

フィオナ・マクラウド/ウィリアム・シャープ 著 中野善夫 訳               

例えば『夢のウラド』が出てきた。尾崎翠が惚れ込んだ作家の小説集だが、フィオナ・マクラウドとウィリアム・シャープはのちに同一人物だとわかる。いわばフェルナンド・ペソアのカップル版みたいなことで、私としては作品の中身というよりは分裂した書き手の所業それ自体が迷宮的になっていることに惹きつけられて、この本を人に薦めたのだった。

『コミック 文体練習』

マット・マドン 著 大久保譲 訳               

〝書き手の所業それ自体が迷宮的〟というところから思い出すのはクノー『文体練習』だが、さらにそれをパロディ的なコミックにした『コミック 文体練習』(マット・マドン)こそ国書刊行会から刊行されているのであり、自分はそういう作品が好きでしかたない。