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書籍詳細

スタニスワフ・レム・コレクション 5

タンペンベストテン

短篇ベスト10

スタニスワフ・レム
沼野充義関口時正久山宏一芝田文乃

発売日
2015/05/22
判型
四六変型判
ISBN
978-4-336-04505-8
ページ数
384頁

定価 2,640円(本体価格2,400円)

※品切増刷未定

内容紹介

集団主義のイデオロギーによって個人が厳しく抑圧される様を、独裁者の支配下、人びとが水の中に住むことを強制されている星に仮託して風刺的に描いた「航星日記・第十三回の旅」、大事故にあった宇宙船の中に唯一生き残った、壊れかけのロボットに秘められた謎を追った「テルミヌス」、高性能コンピュータに人類の歴史のありとあらゆる情報を吸収させた上で詩を作らせる、抱腹絶倒の言葉遊び「探検旅行第一のA(番外編)、あるいはトルルルの電遊詩人」など、本国ポーランドの読者人気投票で選ばれた15篇の短篇から、10篇をセレクトした新訳。

著者紹介

スタニスワフ・レム (スタニスワフレム)

1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年には現代SF の全2 冊の研究書『SF と未来学』を完成。70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『泰平ヨンの現場検証』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年に死去。

沼野充義 (ヌマノミツヨシ)

1954 年東京都生まれ。東京大学卒、ハーバード大学スラヴ語学文学科博士課程に学ぶ。ワルシャワ大学講師、東京大学教授を経て、現在名古屋外国語大学教授、東京大学名誉教授。著書に『徹夜の塊』三部作(『亡命文学論』『ユートピア文学論』『世界文学論』、作品社)、『W文学の世紀へ』(五柳書院)、『チェーホフ 七分の絶望と三分の希望』(講談社)、編著書に『東欧怪談集』『ロシア怪談集』(河出文庫)、『世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義』全5巻(光文社)、訳書にスタニスワフ・レム『ソラリス』(国書刊行会およびハヤカワ文庫SF)、ヴィスワヴァ・シンボルスカ『終わりと始まり』(未知谷)、クラシツキ『ミコワイ・ドシフャトチンスキの冒険』(岩波書店)、ウラジーミル・ナボコフ『賜物』(新潮社)、『新訳 チェーホフ短篇集』(集英社)などがある。

関口時正 (セキグチ トキマサ)

1951 年、東京都生まれ。東京大学卒。1992 年から2013 年まで東京外国語大学でポーランド文化を講じた。同大学名誉教授。2021 年、ポーランド文学普及・翻訳の顕著な業績に対してThe Polish Book Institute よりトランスアトランティック賞を授与される。著書に『ポーランドと他者』(みすず書房)、Eseje niecałkiem polskie(ポーランドUniversitas)、『白水社ポーランド語辞典』(共著)、訳書にスタニスワフ・レム『主の変容病院・挑発』(国書刊行会)、チェスワフ・ミウォシュ『ポーランド文学史』(共訳)、ヤン・コハノフスキ『挽歌』、ボレスワフ・プルス『人形』、アダム・ミツキェーヴィチ『バラードとロマンス』、同『祖霊祭──ヴィリニュス篇』、スタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェーヴィチ『ヴィトカツィの戯曲四篇』(以上未知谷)、『ショパン全書簡──ポーランド時代』、『ショパン全書簡──パリ時代』上・下(共訳)、イヴァシュキェヴィッチ『尼僧ヨアンナ』(以上岩波書店)、『ヤン・コット 私の物語』(みすず書房)などがある。

久山宏一 (クヤマコウイチ)

1958年、埼玉県生まれ。東京外国語大学卒、早稲田大学大学院博士後期課程中退。アダム・ミツキェーヴィチ大学(ポーランド、ポズナン市)にて文学博士号取得。東京外国語大学など非常勤講師。ポーランド語翻訳・通訳。専門はロシア・ポーランド文学研究。著書に『ミツキェーヴィチのソネットとロマン主義期のロシア・ソネット』(ポーランド語)、訳書にスタニスワフ・レム『大失敗』(国書刊行会)、アンジェイ・ムラルチク『カティンの森』(集英社文庫、共訳)、アダム・ミツキェーヴィチ『ソネット集』『コンラット・ヴァレンロット』(以上未知谷)、オルガ・トカルチュク『優しい語り手』(岩波書店、共訳)などがある。

芝田文乃 (シバタアヤノ)

1964年、神奈川県生まれ。筑波大学芸術専門学群卒業。ポーランド語翻訳者、写真家。訳書にスワヴォーミル・ムロージェク『所長』『鰐の涙』(以上未知谷)、スタニスワフ・レム『地球の平和』、ステファン・グラビンスキ『動きの悪魔』『狂気の巡礼』『火の書』『不気味な物語』(以上国書刊行会)、ヴィトルト・シャブウォフスキ『踊る熊たち』『独裁者の料理人』(以上白水社)、共訳書にスタニスワフ・レム『高い城・文学エッセイ』『短篇ベスト10』『火星からの来訪者』、レシェク・コワコフスキ『ライロニア国物語』(以上国書刊行会)などがある。

目次

三人の電騎士
航星日記・第二十一回の旅
洗濯機の悲劇
A・ドンダ教授 泰平ヨンの回想記より
ムルダス王のお伽噺
探検旅行第一のA(番外編)、あるいはトルルルの電遊詩人
自励也エルグが青瓢箪を打ち破りし事
航星日記・第十三回の旅
仮面
テルミヌス
〈メニッペア〉としての小説――短篇作家としてのレムを称えて(沼野充義)