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名取洋之助、亀倉雄策、土門拳、山名文夫――
近代日本のデザイン、写真、グラフジャーナリズムの巨人たちが一堂に会した戦前期の対外宣伝誌『NIPPON』。その奇跡的な成果を余すところなく完全復刻!

復刻版 NIPPON

全3期(41冊)+別冊


全巻完結!好評発売中


   

 

監修のことば
『NlPPON』復刻にあたって
金子隆一(写真史家)
 1920年代における「写真」の近代化は、カメラやレンズ、感光材料の機能を十二分に生かすことに始まった。同時に、写真を大量複製(印刷)し、視覚伝達メディアとして社会化することでもあった。この動向は、1930年代に入り日本では「報道写真」の名の下に様々な追求が実践されてゆく。1934年10月、名取洋之助が主幸する日本工房から創刊された『NlPPON』は、その[報道写真]を実践する雑誌であった。当時最高のスタッフと印刷技術を駆使して制作された各号は、ヨーロッパの先進的なグラフ雑誌と比べて、優るとも決して劣ることのない内実を持つものである。グラフィックに展開される誌面は、メディアとしての写真を近代的に機能させたものと言えよう。
 また、『NlPPON』は対外文化宣伝グラフ雑誌として、戦争へ向かい始める日本の国際的なイメージを発信するメディアでもあった。それゆえ『NlPPON』は、1930年代を中心とする日本の報道写真、グラフィックデザインそして印刷枝術の粋を示すだけではなく、日本の国際戦略を読み解く格好の雑誌なのである。今回の復刻は、適常号だけではなく日本版や特別号など『NlPPON』の多岐にわたる刊行物を網羅することを最終目標としている。これまで研究者や専門家の間でも[幻]であったその全貌を明らかにすることは、『NlPPON』という雑誌がいったい何をなそうとし、何がなしえたかを明らかにするに違いないことを確信する。


日本工房について
 ドイツから帰朝し、フォトジャーナリストとして活躍していた名取洋之助が中心となり、木村伊兵衛、伊奈信男、原弘、岡田桑三によって1933(昭和8)年に設立された同人組織。大宅壮一、高田保、林達夫といった文化人も出入りし、報道写真やグラフィックアートの新しい思想と技術を日本で広め、その方法で現代の日本を世界に紹介するという目標を持っていた。しかし二つの展覧会を開催後組織は分裂し、翌年名取以外のメンバーは中央工房を設立。名取は日本工房(第二次)を再建し、『NlPPON』の刊行を始める。1939(昭和14)年、国際報道工芸株式会社と改称し、戦時下において内閣情報局のもと『MANCHOUKUO』、『COMMERCEJAPAN』などの対外宣伝誌を発行するが、終戦とともに解散した。また分裂した中央工房は後に東方社へと発展し、同じく対外宣伝誌『FRONT』を発行して、共に戦前・戦中期における報道写真とグラフィックデザインの絶頂期を形成することになった。

雑誌「NIPPON」について
大誌面をいっぱいに使った大胆なレイアウト、清新な写真と一流の執筆者を揃え、英・仏・独・スペイン語で刊行した雑誌『NlPPON』。山名文夫、河野鷹思、亀倉雄策ら日本を代表するデザイナーと、名取洋之助をはじめとして土門拳、藤本四八、木村伊兵衛などの切れ味鋭い写真を合体させ、当時における最高水準の印刷技術を駆使して刊行されたこの対外宣伝雑誌は、近代日本のグラフィックデザインや写真表現に、またアートデレクションや広告技術に、飛躍的な発展をもたらした。西欧にひけをとらないレベルの雑誌を日本で作りたいという名取洋之助の熟情はこの『NlPPON』に結実した。戦後においても各方面で活躍する人材を輩出する源となったのである。

●研究者に渇望されながら、所在不明の原本が多いため復刻が不可能であった本書を、今回初めて集大成。
●日本近代において「グラフィック・デザイン」という分野を確立したこの雑誌の全貌を、細部に至るまで正確に完全復刻。
●欧米4カ国語を併記し、写真を中心に構成された美しいレイアウトの誌面を、最高の技術で再現。
●現代写真界の基盤を築いた巨匠たちの撮影した写真が満載。
●戦前期の対外宣伝の様相と共に、当時の社会状況をも克明に写し出す貴重な資料。
●有名作家・評論家等の今まで知られていなかった作品を数多く掲載。

B4変型判・上製豪華セット函入り

第1期 収録巻:NO.1〜NO.12 全12冊揃定価:99750円(税込・分売不可)
ISBN4-336-04389-2

第2期 収録巻:NO.13〜NO.24 全12冊揃定価:99750円(税込・分売不可) 

ISBN4-336-04470-8

第3期 収録巻:NO.25〜NO.36+増刊5冊、別冊

全18冊揃定価:126000円(税込・分売不可)
ISBN4-336-04744-8



推薦のことば
日本戦前文化の高峰
山口昌男(札幌大学学長)
 戦前の日本で世界の一流国の文化に匹敵する高水準のものがなかったというのは大きな誤りであることが、この10年間ぐらいの間で次第に明らかになってきた。
 その時代に国際的に肩を並べることのできた文化的達成の一つは、石原莞爾の情報戦略論とこの雑誌『NlPPON』の刊行であった。石原の場合、人問の集団の動きを戦術において編集し、また様々な情報を集めてこれを戦略において編集し、纏めあげることであったが、イメージにおいて時代をもっとも斬新な方法で切り取り、編集したものが『NlPPON』であった。『NlPPON』は写真家、グラフィックデザイナー、知的思索家の生み出したイメージと情報と思考を編集することによって、戦後の出版を方向什ける知的・美的文化を創り出し、これは未だに越えられていない。この復刻は、そういう時代を垣間見せてくれる貴童な試みである。
甦った幻の『NlPPON』
下島正夫(元多摩美術大学教授・日本工房美術部グラフィックデザイナー)

 今から67年前の『NlPPON』創刊当時、海外列強の中にあって、日本の対外宣伝は、明治時代以来の旧態依然とした状況下、著しく立ち遅れていた。
 名取洋之助は18歳で渡独、ミュンヘン美術工芸学校に学んだ後、ウルシュタイン社やのちに「ライフ」誌などで国際報道カメラマンとして活躍。1932(昭和7)年帰朝して、新進気鋭のカメラマン、グラフィックデザイナーを結集育成しつつ、その溢れんばかりの若さと天与の才能を遺憾なく発揮し、西欧に劣らないグラフ誌を刊行しようとした。能う限りの人材と小型カメラを駆使、写真製版技術において可能な限りの最高をめざして総指揮をとったのである。敗戦と共に膨大な原板も失って、幻の本といわれるようになってしまったが、日本工房から育った草分けの人材たちはその後、日本のヴィジュアル・コミュニケーションをリードすることとなり、大きな足跡を残したのである。
 このたぴ、その幻の『NlPPON』が復刻され甦ることになった。かつて日本工房に参加し仕事をした僅かな生き残りの一人である私にとって、至上の感銘であると共に、名取をはじめ、その仕事に携わったすべての故人先輩たちに、その喜ぴを棒げたい。併せて、向後、カメラマン、デザイナーを志向する方たちに是非ともお薦めしたい。

日本の近代グラフィックデザインの白眉
柏木博(評論家・武蔵野美術大学教授)

 戦前の日本のグラフィックデザインあるいは広くグラフィズムのいわゆる[近代主義]が、どのようなものであったのかということを研究するとなれば、絶対にあたらなければならない、いくつかの資料がある。その中の最重要資料が、『NlPPON』である。対外宣伝雑誌『FRONT』が原弘のアートデレクションで、硬質な構成主義的デザインであったのに対し、『NlPPON』における山名文夫などのアートデレクションは、やわらかなしかし説得刀ある図像表現を実現した。そこには、戦前における日本のグラフィック.のモダニズムの完成された表現を見ることができる。海外を意識したが故の、『NlPPON』のグラフィックデザインに見られる、インターナショナリズムとナショナルなものとの融合は、戦前日本のグラフィックデザィンの白眉だといえよう。したがって、そこには、インターナショナルとナショナルなものをどのように考え位置づけたのかという、近代の難間を読み解くための重要な要素が歴史的事例として存在している。
 近代日本のグラフィックデザィンにかかわるこの重要な資料である『NlPPON』は、これまで一部の施設でしか見ることができなかった。それが今回、復刻されることは研究者にとってきわめてうれしいことだといわなければならない。




『NlPPON』第1号目次(昭和9年10月発行)
 
四十七士の墓に詣でて……カリクシト・ボイット・マルジ(仏語)
火山の下で軽井沢・日光……マルグリット・キルモア(仏語)
現代日本と文化………団伊能(英語)
東京市と市長………レィ・リチャード(英語)
日本の近代建築………市浦健(英語)
女性の世界……ゾ一・キンケィド(英語)
現代日本の文学……杉山平助(独語)
美術界展望………荒城季夫(英語)
写真家紹介………(独語)
日本の舞踊………光吉夏弥(独語)
現代日本の音楽………須永克己(独語)
日本経済飛躍の概括的原因………高橋亀吉(英語)
織物王業………(英語)
歌舞伎芝居・初日を開けるまで………三宅三郎(英語)
新劇運動………北村喜八(独語)
日本映画の発達………板垣鷹穂(英語)
1933年の日蝕………(英語)
日本の国立公園………(英語)
日本の自動車道路………(英語)
水泳………(英語)
詩[印象]………堀口大学(スペイン語)
日本における文化交換の運動………(英語)
旅行案内………(英・独・仏・スペイン語)
日本の商業美術………(仏語)