シリーズTOPに戻る
 
セリーヌの作品 全15巻
OEuvres de Louis-Ferdinand Celine

現代史が粛清の闇に葬り去った<必敗の教祖>……ルイ=フェルディナン・セリーヌの全貌を収める衝撃の作品集!

1932年『夜の果てへの旅』でフランス文壇に登場し、その破格な文体と衝撃的内容によって、世界の読書界に一大旋風を巻き起こしたセリーヌ。不正の象徴としての<ユダヤ人>に鋭い筆鋒を向け、戦後は<戦犯作家として投獄され、その死に際しては司祭から葬儀の執行を拒否されたセリーヌ。全世界、全歴史、全人類の欺瞞を呪詛し、その糾弾に生涯を賭け、絶望的な闘いに倒れた<敗残の巨人>セリーヌ。

初期二大傑作、本国ではいまだに禁忌とされているパンフレット、戦慄的な年代記たる<亡命三部作>等、本叢書では、世界で初めてセリーヌのすべての作品を収める。

今日なお最前衛のディスクール空間、そのヒューマニズム=アンチ・ヒューマニズムの世界……1978年のシリーズ刊行以来、すさまじいまでの反響を巻き起こし、あまたの読者をとりこにしてきた本叢書も四半世紀の時を経て、ついに完結を迎える。


A5判変型・上製布クロス装・箔押・貼函入  造本+装丁:杉浦康平

なぜ私がこんなに<卑語>を、俗語表現を使うか。
なぜ自分でもそれを作り出すかと言うと、それは、
この言葉が直ぐ死ぬからだ、
ということは、この言葉が生きたからだ、
私が使っている限り、
この言葉は生きているからだ。
言葉も、万物の例に洩れず
いつかは死ぬ。
これは致し方のないことだ。
普通の小説の言葉は死んでいる。
文体も、何もかも
死んでいる。

L=F・セリーヌ<アンドレ・ルソーの批判に答えて>
 全15巻内容
1:夜の果てへの旅
高坂和彦訳 500頁 6825円
ISBN4-336-02669-6
第一次大戦の戦場から病院へ、酷暑とマラリアのアフリカから物質文明の砂漠アメリカ合衆国へ、そして貧窮と腐敗の母国フランスへと続く主人公フェルディナン・バルダミュの悪夢のような彷徨。徹底的なペシミスムと人間嫌悪、俗語、卑語をふんだんにまじえた破格の文体によって一大センセーションをまき起し、ゴンクール賞スキャンダル事件にまで発展した、セリーヌの公刊された最初の作品。若き日のサルトルを狂喜させ、トロツキーを「泣き笑い」させた、セリーヌの代表作という以上に、二十世紀フランス文学の生んだ屈指の傑作。
2・3:なしくずしの死(上・下)
高坂和彦訳 300/310頁 各5040円
ISBN4-336-02670-X/02671-8
小学校を出ると直ぐ見習奉公に出されたフェルディナンは、まるで運命の悪意を一身に浴びたかのように行く先々で失敗を重ね、最後に編集秘書としてやっと見出した自由も、実は山師のペテンから出た幻影の開放空間でしかなかった。一切に自信を喪失した主人公は兵役を志願して、物語は『戦争』と『夜の果てへの旅』に受け継がれる。『夜の果てへの旅』とともに初期セリーヌの代表作と言えるこの作品は、虐げられた人々への限りない愛に貫かれた、現代世界の現実としての地獄の戯画である。  
4:ギニョルズ・バンド
高坂和彦訳 292頁 4486円
ISBN4-336-03068-5
外国人や休暇軍人にあふれた第一次大戦下のロンドン。若い軍人フェルディナンと彼の周囲を徘徊する娼婦、波止場人足、泥棒、殺し屋……おびただしい情景描写と生き生きとした会話、錯綜する異常なヴィジョン。快活なユーモアをまじえながら著者は、大戦下のロンドンでの奔放な生活ぶりを物語る。
5:またの日の夢物語 
6:ノルマンス <またの日の夢物語2>
 
5:高坂和彦訳 6:梅木達郎訳  227頁/416頁 各5040円
ISBN4-336-03069-3/03070-7
BBC放送は対独協力者に死刑を!がなりたてている。……物語は、いわゆるパリ解放前夜から、亡命先のデンマークにおいて戦犯として逮捕されるまで、モンマルトルの屋根裏から獄舎にと、場所・時間・筋立て・すべての作品の条件を夢物語さながらの無秩序・奔放・錯綜になげこみ、徹底した独白体・喘息をおもわせる饒舌体のなかに作者自身の年代記風に展開されていく。だが、自伝的に読まれるには文体は火薬の粉をあまりにふりまきすぎて、引火寸前だ。いや爆発そのものだ。ジイドのいうがごとく、セリーヌはここでも現実そのものを描かなかった。現実が魂に強要する眩暈がことばによってとらえられたのだ。
7:城から城
高坂和彦訳 420頁 6090円  
ISBN4-336-02672-6
1944年春、<対独協力者>セリーヌは、解放寸前のパリを逃れ、妻のリュセット、友人の映画俳優ル・ヴィガン、そして猫のベベールと共にデンマークへ渡る目的でドイツに入る……『城から城』は、『北』『リゴドン』と共にいわゆるセリーヌの<亡命3部作>を構成する第1作目である。敗北寸前のドイツ・ジークマリンゲンでの亡命生活。<国民革命(レボルシオン・ナシオナル)>の立役者たちとダルナンの国民軍、そしてナチの閣僚たち。一介の亡命者の眼には、すべてが苦悩と不条理のおりなす喜劇にすぎなかった。『城から城』は歴史の犠牲者セリーヌの苦難の記録でもある。
8・9:北(上・下)
高坂和彦訳 250頁/260頁 各4180円 
ISBN4-336-02673-4/02674-2

物語の時代と背景は、前作『城から城』に先立つ。バーデン・バーデンからクレンツリンへ、戦禍のドイツを縦断する悲惨な亡命生活。晩年のセリーヌが作家としての全力量をぶつけた『北』は、あまりにも早急な歴史の歩みから未消化のまま置き去りにされた人間が、執拗なまでに訴え続ける悲痛な再審判への願である。従来見られた快活なユーモアはもはや影をひそめ、暗い内容にふさわしい独創的な灰色の文体で語られる。<第3帝国>最後の日々のドイツ年代記とも称すべき本書は、亡命三部作中の最高傑作。
10:虫けらどもをひねりつぶせ
片山正樹訳 448頁 6300円 
ISBN4-336-03071-5

文学論、バレー論、三つのバレー台本、現代ヨーロッパの堕落についての考察等、一見無秩序な構成のもとに、時に冷徹、時に狂疾染みた文明論が展開されるこの文書は、その基調をなす激しい<反ユダヤ思想>のため1937年以来フランスにおいては再び陽の目を見ぬ幻の書となっている。セリーヌの<反ユダヤ主義>とは何だったのか、ユダヤ人とは何か、いまこそ恐れず直視しなければならない時である。この徹底した反戦主義者の、何が偏見だったのか、何が「犯罪」だったのか。
 
11:死体派
長田俊雄訳 320頁 4410円 
ISBN4-336-02675-0
 
独特のリズム、感嘆符、俗語、ネオロジスムを駆使した奔放な文体で書かれ、長短105篇の断章及び写真数葉から成る本書は、<反資本主義>と<反ユダヤ主義>と<反戦主義>とを核にして、人類全体が陥っている頽廃、不正、堕落に対する痛烈な批判・侮蔑・呪詛に満ちている。1938年に出版されたこの政治的社会評論集は、その政治性ゆえに『虫けらどもをひねりつぶせ』37年、『苦境』41年とともにバラン版全集、プレイヤード版作品集からも除外されている重要な稀書である。

12:苦境 他 
礒野秀和・池部雅英・浅井喬男訳  390頁 5880円
ISBN4-336-02676-9 
   
<女たらしの国!><老いぼれの垂れ流し><鼻垂れ小僧共の集団!><屁のような計画>……かくのごとき俗語、卑語、猥語を駆使したセリーヌ特有の文体で語られる『苦境』は、フランス、および現代ヨーロッパ文明への根底的な疑念と批判の表明の書である。それは、時事的現象面を問題にするとは言え、大戦間から第二次大戦へかけてのこの時期に、著者が終始一貫して抱いていたヨーロッパ文明の構造そのものへの痛烈な批判であった。他に、36年に発表された<反ソ・反共>文書『メア=クルパ』、晩年のエッセイ『Y教授との対話』、及び初期の医学論文『ゼンメルヴァイスの生涯と業績』、その他を収録。
13:リゴドン
高坂和彦訳 260頁 4180円 
ISBN4-336-02677-7
 
ツォルンホフからデンマーク行きのチャンスを求めてロストックへ、一歩行っては二歩退り、リゴドン踊りさながらに、息つく暇もない逃避行は続く……1961年6月30日、セリーヌは亡命三部作の最後を飾るユーモアと人間愛に包まれた本作に最後の点点点(トロワ・ポワン)を打った。翌7月1日、彼の生涯に終止符が打たれた。脳出血。享年66歳。
14:戦争・教会 他
石崎晴己訳 410頁 3570円 品切 
ISBN4-336-02678-5
  
『夜の果てへの旅』の原型として、またサルトル『嘔吐』の引用で有名な戯曲『教会』、フェルディナンの入営を描く『戦争』および『胸甲騎兵デトゥーシュの手記』、レーゼ・シナリオ『島の秘密』、バレー台本『ファン・バガデン』他を収録。…「そうです!私は、病気の人間との関係の方が好きなんです。元気な人間というのは、性悪で愚劣だ。立って歩けるようになるとすぐに、仲々の遣り手だってところを見せようとするものだから、彼らとの関係は、ほとんどアッという間に、失敗に終わってしまう。」(『教会』より)

15:ギニョルズ・バンド2
高坂和彦訳 576頁 6116円 
ISBN4-336-03072-3
  
老奇人ソステーヌと防毒マスクの開発に携わり、美少女ヴィルジニーと恋におちるフェルディナン。スパイの嫌疑をかけられ、船での脱出を企てるが……。戦争熱に浮かされたロンドン裏街の猥雑な写し絵。

 


セリーヌが描くのは現実ではない。
現実が生み出す幻覚である。
アンドレ・ジイド


僕はいま『なしくずしの死』を読み終えたばかりだ。素晴らしい作品。荒々しい作品。やっぱり現代最高の作家だろう。枢軸軍を打ち破ったあとは、連中はセリーヌをたたきつぶしにかかるにちがいない。彼はヒットラーがかつて持った以上のダイナマイトをうちに蔵している。
これは永遠の憎悪だ――全人類に対する憎悪だ。だが、なんて陽気な調子なんだ……。
まさに、血でこびりついたユーモアだよ、これは。
ときには腹の皮をよじらせるこの本を手に入れたまえ、ラリイ、これはきっと君を元気づけてくれるよ。僕以上に君はこの本が気に入るにちがいない。
ヘンリー・ミラー

 

セリーヌは、万人のものだ。彼が道を誤ったのは、現実に対して文学的なまなざしを向けたからに他ならない。彼は、その言語によって現実を変形した。
彼から出て来た作家は、大勢いる。まずサルトルがそうだ。サルトルのエクリチュール、こう言った方がよければ、その<言語化された視覚>は、セリーヌのそれと同じ振動を見せる。
いずれにせよ、セリーヌの作品は、クローデルの作品より、いかがわしさが少なく、より健全だと言える。それに、今日において、アンガージュマンとは、一体なんなのだろう?
ロラン・バルト


セリーヌはフランスの言語が生んだ息子、ディドロやラブレーに引けをとらぬ兄弟、さらにウィリアム・バロウズから、ビート世代、ブラックユーモアにいたる、文字どおり一切の父親として賞賛されてきた……二十世紀の黙示録の傑出した幻視者として彼の名声は衰えそうにない。
ニューヨーク・タイムズ