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トンコウシャホンダイジョウキシンロンソノケンキュウ

敦煌写本『大乗起信論疏』の研究

発売日 2017/06

判型 菊判変形   ISBN 978-4-336-06171-3

ページ数 364 頁   Cコード 3015

定価 9,504円 (本体価格8,800円)

内容紹介

 本書は、杏雨書屋本(杏雨書屋所蔵敦煌写本羽333V、大乗起信論疏)の全文を解読してテクストと訳注とを作成するとともに、5編の解題論文によってこの文献の思想史的位置づけを解明した訳注研究である。
 杏雨書屋本は2011年に初めて公開された新出資料で、真諦訳『大乗起信論』に対する注釈の残巻である。曇延の義疏に先行し、法蔵の義記にも影響を与えた杏雨書屋本は、中国初期の起信論疏であり、起信論最初期の形態を残し、また失われた真諦撰『九識章』の内容を僅かながらも伝える貴重な資料である。
 ⅠはⅡ「テクストと訳注」の解題である。初期起信論疏で現存するものは、曇延(516-588)、浄影寺慧遠(523-592)、元暁(617-686)、法蔵(643-712)の疏が知られている。ここでは杏雨書屋本と直接の影響関係が見られない「元暁疏」を除き、3疏との関係を論じる。
 解題1では、杏雨書屋本の書誌的な基本情報についてまとめたうえで、現存写本の性格を考察する。現存写本に多数見られる修正や書き込みを分析し、現存写本は原本ではなく改訂版であることを明らかにする。また、改訂後の注釈内容が前後の文脈と合わない例が複数あることから、「原本」の撰述者と現存写本の改訂者とは別人であると指摘する。さらに、杏雨書屋本にみられる改訂の跡と曇延疏とを比較すると、曇延疏がつねに改訂前の内容と一致することから、曇延疏が見た「杏雨書屋本」は改訂前の「原本」であると推論する。
 解題2では、杏雨書屋本と真諦訳書・撰述書との関係を、曇延疏と比較しながら考察する。従来の研究では、真諦訳論書を依用することこそが曇延疏の特色と考えられていた。ところが、杏雨書屋本が真諦訳書・撰述書を使用する事例を網羅的に取り上げて曇延疏と比較すると、杏雨書屋本のほうが真諦訳書・撰述書を積極的かつ忠実に依用している。さらに、曇延疏にみられる真諦訳書の要素は杏雨書屋本(の「原本」)を通じて曇延疏に取り入れられたことを明らかにする。
 解題3では、杏雨書屋本と曇延疏との影響関係について考察する。曇延疏が杏雨書屋本を批判したと考えられる事例などを検討し、杏雨書屋本(の「原本」)が曇延疏に先行することを確定し、起信論の心・意・意識説に対する両文献の相違点などを具体的に明らかにする。
 解題4では、杏雨書屋本と慧遠疏との関係を、両者の心識説の比較を通して考察する。まず、慧遠疏の著者問題について考察し、慧遠の真撰ではないと結論する。そして、両文献の心識説は、6世紀後半に行われていた起信論に対する2つの代表的な解釈のそれぞれ一方を反映しているのではないか、という新見解を提示する。
 解題5では、杏雨書屋本と法蔵疏との影響関係について考察する。法蔵疏が、曇延疏に影響を与えた杏雨書屋本をも直接参照していたことを、5つの事例を分析することによって論証する。
 Ⅱは、杏雨書屋本の校定テクストと訳注である。杏雨書屋本の科段を基準として、科段ごとに、
  (1)注釈対象である『起信論』の原文
  (2)杏雨書屋本の原文と訳文
  (3)比較対象である曇延疏の原文
の3つをひとまとめに提示する会本の形式をとっている。
 校定テクストの本文には、現存写本の改訂後のテクストを採用した。改訂前のテクストを可能な限り読み取り、現存写本の撰述者が行った改訂作業の実態をすべて注記している。今後はこのテクストが杏雨書屋本研究の基礎資料となるであろう。

著者紹介

金剛大学仏教文化研究所 (コンゴウダイガクブッキョウブンカケンキュウジョ)

目次

 序   金 成哲
Ⅰ 解題
   凡例
 一 杏雨書屋本『大乗起信論疏』の書誌情報と現存写本の文献的性格について  池田將則
 二 杏雨書屋本『大乗起信論疏』と真諦訳書・撰述書
     ――曇延『大乗起信論義疏』との比較を通して  金 成哲
 三 杏雨書屋本『大乗起信論疏』と曇延『大乗起信論義疏』  池田將則
 四 杏雨書屋本『大乗起信論疏』と慧遠『大乗起信論義疏』
     ――両者の心識説の比較  崔 鈆植
 五 杏雨書屋本『大乗起信論疏』と法蔵『大乗起信論義記』  池田將則・金 天鶴
Ⅱ テクストと訳注  金剛大学仏教文化研究所編(責任編集 池田將則)
  凡例
  科段
 テクストと訳注

 解題執筆者紹介
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